ここでは毛引き症以外の脱羽、羽毛変色、羽毛形成不全および嘴形成不全を主徴候とする病気について解説します。これら症状を異常と認識するには、正常な羽毛の解剖や機能、鳥種およびその品種における正常な羽毛の色や形状、配列を覚えておかなければなりません。これらに関しては様々な成書、実用書に記載されているのでそれらを参照して頂きたいと思います。

羽毛および嘴異常の臨床症状

(1) 脱羽
脱羽は羽毛が欠落していることです。脱羽が毛引きをしているのか、他の原因で脱落したのかを鑑別するには、鳥が羽根を引抜く行動がないかをよく観察する必要があります。毛引きの場合には、正常な羽毛だけでなく、新生羽が床に落ちていたり、ちぎられた新生羽の羽軸が羽包に残り、時には出血を伴うこともあ ります。また頭部は毛引きできないため、通常生えそろっています。

(2) 羽毛変色
羽毛変色はセキセイインコ、オカメインコ、コザクラインコによくみられます。
セキセイインコでは緑色が黄色に、青色が白色に、ケンソン種では青色が黄色に変色します。
オカメインコでは黄色に変色することが多いです。ホワイトフェイス種では白色に変色 しますが、判断が難しく、アルビノ種では変色の確認は困難です。
コザクラインコでは、緑色が赤色または黄色に変色することが多いです。

(3) 羽毛形成不全
羽毛形成不全とは、羽毛が正常に成長・発達しないものをいいます。羽毛形成不全には、羽軸壊死による未成熟羽毛、羽軸内血液凝固、羽軸棍棒化、ハタキ化、ダウンフェザーの伸長、風切羽および尾羽が細くなる 、ストレスラインなどがあります。いずれも羽毛にまとまりがなくなり、みすぼらしい様相とな ります。

(4) 嘴形成不全
嘴形成不全は、嘴の過長、脆弱化、横または縦のストレスライン、変色や出血班などがみられるものをい います。多くは肝機能障害や高脂血症によって起こります。

羽毛、嘴異常の鑑別診断

羽毛、嘴異常の原因には、感染性と非感染性の2つがあります。感染性疾患には細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、クラミジア感染、寄生虫感染があり、非感染性疾患には肝臓疾患、内分泌疾患、栄養性疾患があります。
羽毛、嘴異常の鑑別診断は、他に特徴的な徴候を伴っていることが多く、また好発鳥種も決まっているため、比較的容易です。

外貌からの鑑別診断(ファーストステップ)

(1) 脱羽
脱羽は、PBFD、BFD、皮膚真菌症、甲状腺機能低下症、栄養性羽毛形成不全などによって起こります。
PBFD、BFD、栄養性羽毛形成不全は類似していることがあります。これらはセキセイインコに好発し、徐々にあるいは進行性に脱羽します。鑑別には遺伝子検査を行いウイルスの有無を確認します。また栄養性の場合は、脱羽した後すぐに発羽することが多いです。
皮膚真菌症はブンチョウに好発し、皮膚の白色落屑または乾酪性の黄色病変がみられ、掻痒を伴います。
甲状腺機能低下症はブンチョウ、セキセイインコに好発し、原発性の機能低下症ではなく、ヨード不足による栄養性のものが多いと考えられます。ブンチョウの脱羽は頭部に発生することが多く、特に嘴基部、頬部、後頭部、下顎部が薄羽となります。また、ブンチョウの脱羽は、性ホルモン分泌過剰も関与していると考えられており、雄雌共に持続的に発情していると脱羽することが多いです。

(2) 羽毛変色
羽毛変色は、脂肪肝症候群、甲状腺機能低下症、栄養性羽毛形成不全でみられます。
脂肪肝症候群はオカメインコ、セキセイインコ、コザクラインコに好発します。特にオカメインコの黄色羽毛症候群(Yellow Feather Symdrome)がよく知られています。羽毛異常の原因は肝機能障害ですが、なぜ変色するのかは不明です。
甲状腺機能低下症はセキセイインコ、オカメインコ、ブンチョウに好発します。しかしブンチョウでは羽毛変色はみられません。セキセイインコやオカメインコで顕著に変色がみられますが、代謝低下による肥満は脂肪肝症候群に発展するため、この2つの疾患は密接な関係があります。
栄養性羽毛形成不全による羽毛変色は主にセキセイインコの若鳥にみられ、成長期の蛋白質不足あるいは消化器疾患による栄養吸収不全が原因です。体躯を覆う正羽に縁取りをしたような変色がみられます。

(3) 羽毛形成不全
羽毛形成不全は、PBFD、BFD、脂肪肝症候群、栄養性羽毛形成不全でみられます。
PBFDはセキセイインコに好発し、コザクラインコに時折みられます。BFDはセキセイインコに発生しますが、発症し臨床徴候を呈することはまれです。PBFDとBFD、栄養性羽毛形成不全の羽毛異常は類似しており、羽軸壊死による未成熟羽毛、羽軸内血液凝固、羽軸棍棒化、羽毛のねじれ、ストレスラインなどがみられます。
脂肪肝症候群では風切羽および尾羽が細くなる、ハタキ化、ダウンフェザーの伸長などの徴候がみられます。

(4) 嘴形成不全
嘴形成不全はPBFD、鳥クラミジア症、疥癬症、脂肪肝症候群、栄養性嘴形成不全でみられます。
PBFDでは特に上嘴が過長し、脆弱化します。またストレスラインや破損もみられることがあります。
鳥クラミジア症はオカメインコに好発します。この疾患の主症状は呼吸器症状ですが、慢性感染では肝機能障害による嘴形成異常がおこることがあり、上嘴の過長、出血斑などがみられます。
疥癬症は、ヒゼンダニの嘴組織内への感染によって起こります。嘴および基部皮膚組織に白色痂皮が付着し、嘴が過長します。同時に脆弱化、ストレスラインなどがみられます。
脂肪肝症候群では、上嘴の過長、脆弱化、出血斑などがみられます。
栄養性嘴形成不全では、上嘴の過長、脆弱化、ストレスラインなどがみられます。

掻爬検査による鑑別診断(ファーストステップ)

掻爬検査とは、皮膚を引っ掻いて得られた物を顕微鏡で見る検査です。掻痒や皮膚炎がある場合に行います。菌糸や分生子(胞子)がみられた場合は、真菌性皮膚炎が疑われます。セキセイインコの顔面にできる白色の痂皮の掻爬検査によって、疥癬症が診断できます。ブンチョウでは、皮膚にダニが見つかることがあります。

血液検査による鑑別診断( セカンドステップ)

血液検査は、非感染性の羽毛、嘴異常を診断するのに有用な検査です。

総白血球数
総白血球数およびヘテロフィルの上昇は、 感染・炎症が存在する可能性を示唆しており、特に鳥クラミジア症の診断に有用です。慢性のPBFDやBFD、皮膚炎では上昇することは稀です。

肝機能
鳥の肝機能を評価する際に測定される生化学項目には、AST、GGT、LDH、総胆汁酸、CPK、総コレステロールがあります。
鳥は肝障害時初期にはLDHが上昇し、中期以降はASTが上昇します。AST、LDHともに特異性、感受性が高いわけではないですが、上昇の際には常に肝疾患を疑わなければなりません。
CPKは、骨格筋、心筋、神経の障害を示す値ですが、AST、LDHの上昇時の由来の鑑別として測定されるべきです。
GGTは、胆道疾患時に上昇し、特異性が高いが感受性は低いです。
総胆汁酸は、最も純粋な肝機能を示しており、AST、LDHの上昇がなくても、総胆汁酸の上昇によって肝疾患を診断できます。
総コレステロールの上昇は、コレステロールを多く摂取することの少ない鳥では、食事性は考えられず、多くは排泄障害による上昇です。肝酵素の上昇がみられなくても総コレステロールの上昇がみられた場合は、常に肝疾患を疑わなくてはなりません。

甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモン(T4)の減少は甲状腺機能低下症を診断できますが、検査には検体量が必要なため、検査には至らないことが多いです。

遺伝子検査による鑑別診断( セカンドステップ)

PBFD、BFDの診断には、遺伝子検査が必要になります。PBFDは、血液検体を用いれば通常1回の検査で診断することができます。BFDは、血液や糞便、クロアカスワブ検体を用いますが、1回の検査では必ずしも診断できるとは限りません。
肝臓疾患に鳥クラミジア症が関連していないかを調べるためにも遺伝子検査が必要になります。鳥クラミジア症も血液や糞便、クロアカスワブ検体を用いますが、1回の検査では必ずしも診断できるとは限りません。

羽毛、嘴常がみられる病気

感染性疾患

PBFD (Pcittacine Beak and Feather Disease) オウム類の嘴・羽毛病
原因  PBFDはウイルス性疾患であり、Circovirus(サーコウイルス)の感染によって発起こります。PBFDではなく、PCD(Pcittacine Circovirus Disease;オウム類のサーコウルス病)と呼ばれることもあります。
Circovirusは一般的にPBFDVと呼ばれます。PBFDVは直径16ナノメートルで、ゲノムは環状の一本鎖DNAです。病気を引き起こすウイルスとしては最も小さく、鳥以外の動物に感染することはありません。セキセイインコ等の小型インコ類、ローリー類に感染する変異株が存在します。
PBFDVは嘴や羽毛の細胞に感染して障害を起こすだけでなく、免疫細胞に感染して免疫低下を引き起こし、細菌感染等の2次感染を引き起こします。
伝播  伝播は、PBFDが発症した親を繁殖に使うことは無いため、主に水平感染 となります。ウイルスは、糞便や脂粉内に排泄され、これを経口的に摂取、あるいは吸入することによって感染します。
PBFDに感受性が高いのは、3歳以下の若齢の鳥で、3歳を過ぎると感染しにくくなります。
発生  多くのインコ・オウム類に発生がみられます。国内で最も多く発生がみられるのはセキセイインコですが、これは飼育数が多いためと考えられます。他にもコザクラインコ、ボタンインコ、ワカケホンセイインコ、セネガルパロット、ヨウム、バタン類(Cockatoo)などに時折みられます。
症状  多くが慢性感染であり、幼鳥の正羽発羽時または換羽に発症します。
セキセイインコでは羽毛障害の発現にいくつかのパターンがみられ、ほぼ全身の羽毛が脱落する場合(ランナーと呼ばれる)、羽毛の部分的または散発的な脱羽がみられ、発羽した羽毛には羽毛形成不全がみられる場合、体幹羽毛には異常がみられないが、風切羽と尾羽にのみ脱羽および羽毛形成不全がみられる場合などがあります。羽毛形成不全には、羽軸壊死による未成長、羽軸内血液凝固、ねじれ、ストレスライン、変色などがあります。嘴形成不全は、中型・大型鳥ほどみられませんが、外観は栄養性嘴形成不全に類似します。

その他の中型・大型鳥では、羽毛の部分的または散発的な脱羽がみられ、明らかな羽毛形成不全がみられることが多いです。 ヨウムでは赤色に羽毛が変色します。嘴は、最初は粉羽が減少することにより光沢がみられるようになりますが、徐々に過長、ストレスライン、脆弱化といった嘴形成不全がみられるようになります。
免疫能低下により、細菌、真菌、クラミジアなどの2次感染を起こします。セキセイインコに最も多いのは消化器症状で、下痢や尿酸色異常がみられることが多いです。中型・大型鳥に最も多い症状は口内炎です。口内炎による疼痛や嘴形成不全から摂食不全が起こり、徐々に衰弱することが多いです。
急性感染を起こした場合、羽毛異常は発現せず、急性肝炎や貧血を引き起こし、多くが死亡します。急性感染は、ヨウムの幼鳥に多く発生します。
診断  典型的症状により、多くが暫定診断可能ですが、確定診断には遺伝子検査(PCR)によるPBFDVの検出が必要です。検体には血液や新生羽を用いますが、PBFDを発症した個体は常にウイルス血症を起こすため、血液を用いるのが一般的です。羽毛や糞便での検査は、結果が不安定になります。
治療  PBFDVの増殖を抑制する抗ウイルス剤は存在しないため、免疫賦活を目的とした治療を行います。
予後  治療法が確立されていない病気のため、治療を諦められてしまうことが多いですが、セキセイインコでは早期発見および免疫賦活治療により完治する例も多いです。しかし発症して時間が経ってしまった例では、回復は困難です。

 

BFD (Budgerigar Fledgling Disease)  セキセイインコ雛病
原因 BFDはウイルス性疾患であり、Papovaviridae Polyomavirus(パポバウイルス科 ポリオーマウイルス)の感染によって起こります。Polyomavirusは一般的にAPV(Avian polyomavirus)と呼ばれ、エンベロープを有さないDNA型ウイルスです。APVは、1980年代初期に南東および南中アメリカおよびカナダのオンタリオで、セキセイインコにおいて最初に認められました。それ以前にはフレンチモルトと呼ばれていました。
発生  セキセイインコだけでなく、コザクラインコ、ボタンインコ、メキシコインコ、ワカケホンセイインコ、コンゴウインコ類、オオハナインコ、バタン類など多くのオウム目鳥に感染します。海外では繁殖場での大量死が問題となっていますが、国内での被害はほとんど報告されていません。しかしこれは国内において幼鳥の死亡原因としてあまり認識されていないことも原因となっている可能性があります。
発症例の多くは10日から25日齢の幼鳥で致死的な経過を示し、羽毛異常を示す例は、臨床の場でみることは少ないです。
症状  ウイルスの暴露により多くの鳥が感染しますが、成鳥のほとんどは一時的なウイルス血症を起こすのみで、発症するには至らないことが多いです。
セキセイインコの幼鳥が発症した場合、異常羽毛の発現、皮膚の変色、腹部膨 大、腹水の貯留、肝壊死と散在性の出血を伴う肝肥大、小脳感染による頭振などがみられ、致死的な経過をとります。すべての鳥が死亡するわけではなく、生存した個体においてはPBFDに類似する羽毛異常がみられ、特に風切羽と尾羽の欠損や未成長がみられます。
コザクラインコ、ボタンインコにおいては1歳齢まで感染の影響を受けます。しかし多くの羽毛異常発現症例ではPBFDの同時感染を起こしており、徴候の発現がBFDによるものなのかの判断は困難です。
診断  血液やクロアカスワブを検体とした遺伝子検査(PCR)を行います。
治療  幼鳥の発症例で、腹部膨大、腹水の貯留、肝肥大、頭振などの症状がみられた場合は予後不良です。
羽毛異常は、PBFDとの混合感染がある場合がほとんどなので、PBFDの治療に順じます。
無症状個体に陽性が検出された場合は、一過性のウイルス血症であるため、3ヵ月後に再検査を行います。通常は治療の必要はなく陰転しますが、キャリアとなる場合もあります。

 

細菌性皮膚炎
原因  主にブドウ球菌が皮膚に感染することが原因です。
発生  多くの飼い鳥にみられます。
症状  掻痒が強く、感染部位を毛引き、自咬します。常に皮膚を齧っている場合には、皮膚は潰瘍化し、時に出血します。
診断  多くの場合、自咬症を伴いますが、皮膚炎による自咬なのか、自咬することによって皮膚炎が起こっているか鑑別するのは困難です。
細菌を検出するには、皮膚の拭い検体または皮膚の培養を行いますが、通常は症状による暫定診断で治療を開始します。
治療  エリザベスカラーを装着し、毛引きおよび自咬を防ぐことが、最も重要です。感染に対しては抗生物質を投与します。

 

真菌性皮膚炎
原因 Trichophyton、Microsporum、Candidaなどの皮膚、嘴への感染が原因です。
発生  多くの飼い鳥にみられますが、特にブンチョウに多くみられます。
症状  落屑(白いカサカサした物)や皮膚の黄色肥厚を伴う脱羽、嘴の部分的膨隆や変形がみられます。時に肉芽腫性皮膚炎をおこし、腫瘤を形成することがあります。
診断  患部を掻爬し、直接鏡検を行い糸状菌および分生子、酵母様真菌の検出を行います。しかし皮膚から採材される量は少ないため、検出できないことも多いです。
患部を掻爬した検体を、真菌培養に出して検査することもあります。
治療  抗真菌剤の内服および外用を行います。
予後  真菌症は、なかなか治りにくく、再発しやすい病気です。根気よく治療する必要があります。

 

鳥クラミジア症
原因  Chlamydophila psittaciの慢性感染による肝機能障害が原因となり、嘴形成不全がみられることがあります。
発生  難治性のクラミジア感染は、オカメインコやコザクラインコに時折みられます。
症状  感染初期は、呼吸器症状がみられますが、投薬により呼吸器症状が改善しても、肝疾患症状が消えず、慢性肝疾患の経過をたどると、嘴の過長、脆弱化がみられるようになります。
診断  糞便および血液の遺伝子検査(PCR)を行い、クラミジアの検出を行います。しかし呼吸器症状が消失後は、クラミジアの排泄はみられないこともしばしばあります。
レントゲン検査により肝肥大、脾臓の腫脹がみられます。
生化学検査によりAST、GGT、LDH、TCHO、総胆汁酸の上昇がみられます。
治療  初期の呼吸器症状がある場合は、抗生物質の投与を行います。抗性物質は、45日間投与しますが、呼吸器症状が消失しない場合には、45日以上投与することもあります。
肝機能障害に対しては、肝庇護剤、利胆剤を投与します。
嘴の変形がある場合には、定期的に整形を行います。

 

疥癬症
原因  センコウヒゼンダニの感染によって起こります。発症は、免疫力が関与していると言われており、免疫力が低下すると発症しやすくなります。
発生  主にセキセイインコにみられます。まれにブンチョウやオカメインコにもみられます。
症状  嘴や口角、眼瞼、脚に白色の痂皮(かさぶた)が形成され、強い痒みを伴います。重度の症例では、嘴が脆弱化し、変形し過長します。
診断  典型的な症状から暫定診断可能ですが、確定診断には痂皮を掻爬し、顕微鏡で虫体を確認します。
治療  駆虫薬を塗布します。徐々に痂皮が取れ、痒みが減少していきます。嘴が重度に変形いた場合には、定期的に整形を行っていく必要があります。

非感染性疾患

脂肪肝症候群
原因  脂肪肝症候群は、人でいうメタボリック症候群の中の一つです。食べ過ぎ、高脂肪食、蛋白質不足、運動不足、甲状腺機能低下症などによる肥満が原因となります。鳥は肝臓に脂肪が付きやすく、肥満時には脂肪肝症候群を起こすことが多いです。
過食は雌に多くみられ、その原因の多くは持続発情によるもので、産卵のために摂取量が増大します。さらに持続発情は、肝臓での卵黄および卵白蛋白、脂質産生が継続して行われ、肝機能の低下を招きます。また騒音や睡眠不足、同居鳥との不和といった環境ストレスも過食の原因となり得ます。
高脂肪食のものには、ヒマワリの種や麻の実、サフラワー、カボチャの種などがあります。これらの種実類はコザクラインコやオカメインコ以上の大きさの鳥には常食させている方が多いので注意が必要です。
蛋白質不足や必須アミノ酸不足は、産卵や換羽といった蛋白質要求量の増える時期に大きく影響します。食物中の蛋白質が少ない場合、蛋白質摂取量を増やすには食物を多く摂取しなければならず、結果として肥満の原因となります。
運動不足はケージ内にいる時間が多いためなのは言うまでもありません。野生では日に数キロから数十キロの移動を行いますが、これに見合う運動を飼い鳥にさせるのは、一般家庭環境では困難です。肥満による運動不耐性が出ると、さらに動かなくなります。
甲状腺機能低下症は、ヨード不足によって起こります。甲状腺ホルモンはヨードがないと作ることができません。甲状腺ホルモンは代謝率を上げるホルモンなので、不足すると代謝率低下により、肥満が起こります。
発生  セキセイインコ、オカメインコ、コザクラインコにしばしばみられます。特に肥満した雌に多いです。
症状  肝機能障害が軽度な症例は無症状なことが多いですが、肝機能障害が進行したり、高脂血症が進行すると羽毛変色、羽毛形成不全がみられます。セキセイインコでは青色羽毛が白色または黄色に、緑色羽毛が黄色に変化します。オカメインコでは、全身羽毛が黄色に変色し 、黄色羽毛症候群(Yellow Feather Symdrome)とも呼ばれます。

コザクラインコでは、緑色羽毛が赤色に変化します。また同時に羽毛のハタキ化、ダウンフェザーの伸長、風切羽および尾羽が細くなる、ストレスラインといった羽毛形成不全もみられることが多いです。

その他嘴の過長、硬度低下、出血斑などの嘴形成不全もみられます。重症例では、出血傾向による血便、皮下出血、肺出血等がみられることもあります。
診断  肝生検が実施できれば確定診断ができますが、現在のところ筆者は行っていません。よって特徴的な羽毛、嘴異常の症状がみられた場合は、レントゲン検査にて肝肥大の確認と血液検査にてAST、GGT、LDH、総胆汁酸、NH3、TCHO、TGの上昇をもって暫定診断を行います。しかし肝細胞の障害が軽微、またはすでに肝硬変や肝萎縮を起こしている場合は、血液検査で肝機能の上昇がみられないこともあるため、胸腹部の皮下脂肪や皮膚のたるみの確認、バンブルフットの有無などの過去の肥満歴から推測する必要もあります。
重度の肝肥大では超音波検査にて診断できることもあります。
治療  治療は、肝機能改善、高脂血症改善を主に行います。出血傾向が見られる場合には、止血剤、ビタミンKの投与を行います。
また肥満個体に対しては、食事制限による減量、運動時間を増やすようにします。
嘴の過長がある場合には、トリミングを定期的に行います。
予後  脂肪肝症候群は、肝障害が軽度であれば治る病気ですが、肝障害が大きい場合、症状の軽快はみられますが、完治しないこともあります。投薬の効果は、換羽後の正常羽毛出現によって確認できますが、換羽が起こらない場合や換羽後に再び異常羽毛が生えてくる場合には、継続して投薬を行う必要があります。

 

甲状腺機能低下症
原因  甲状腺原発の機能低下ではなく、主にヨード不足による甲状腺ホルモン分泌量の低下をさします。甲状腺ホルモンは換羽や羽毛形成に関与しており、低下によって脱羽や羽毛形成不全を示します。また代謝率の低下は肥満を招き、脂肪肝症候群の原因にもなると考えられています。
発生  ブンチョウ、セキセイインコ、オカメインコに多くみられます。
症状  セキセイインコでは羽毛変色、羽毛形成不全が多くみられ、青色羽毛は白色または黄色に、緑色羽毛は黄色に変化します。体幹部羽毛はハタキ状となりまとまりがなくなります。またダウンフェザーの伸長もみられ、特に腰部に目立つようになります。
ブンチョウでは脱羽が多くみられ、特に頭部に発羽不全が 多くみられます。また換羽が起こらないこともしばしばで、羽毛の汚れや擦り切れが目立つようになります。 しかしブンチョウの場合は、性ホルモンの分泌過多でも脱羽が起こることが疑われています。
診断  主に特徴的な症状から暫定的に行われますが、血液検査をして血液中の甲状腺ホルモン測定を行い、診断することもあります。
レントゲン検査で甲状腺肥大がみられる場合は、甲状腺腫性機能低下症です。しかしTSH(甲状腺刺激ホルモン)に反応できないか組織の残存がない場合は,萎縮性機能低下症がみられることもあります。
代謝率が低下するため、血清コレステロール、トリグリセライドの上昇がみられます。また脂肪肝症候群を併発した場合は、肝酵素の上昇もみられます。
治療  ヨード剤および甲状腺ホルモン剤の投与を行います。
予後  甲状腺機能低下症による羽毛異常の治療も脂肪肝症候群と同様に、投薬の効果は換羽が起こるまで確認できません。換羽が起こらない場合や換羽後に再び異常羽毛が生えてくる場合には、継続して投薬を行う必要があります。

 

栄養性羽毛・嘴形成不全
原因  幼鳥期の栄養不足、特に蛋白質および必須アミノ酸不足が主な原因です。市販あわ玉にお湯をかけただけのものをさし餌することで発生することが多いです。また親鳥の栄養不足やさし餌の与え方の間違いによる摂取不全、さし餌回数不足による一日摂取量不足も原因となります。
胃腸炎、胃腫瘍、膵外分泌不全、肝疾患等の消化器疾患による蛋白質消化吸収不全も原因となります。
発生  多くの飼い鳥に発生します。
症状  全身羽毛に羽毛変色、羽毛形成不全、脱羽がみられます。体幹羽毛はハタキ化し、羽毛辺縁に変色が出ることが多いです。また幼鳥では風切羽と尾羽の成長異常がみられることが多く、未成長、羽軸内血液凝固、ねじれ、ストレスラインなどがみられ、ウイルス性羽毛障害と類似することがある。
嘴は脆弱化し、過長することが多いです。インコ類では上嘴の湾曲が緩やかとなり、下嘴との交合不全を起こします。フィンチ類では上嘴先端の過長、上嘴両側が張り出すように変形し、下嘴は内側へ巻き込むように変形します。
診断  特徴的な症状が確認された場合は、食事内容を聴取し、蛋白質および必須アミノ酸摂取量の確認を行います。また消化器疾患を示す症状がみられないかも確認します。
インコ類に、ウイルス性羽毛障害と類似する症候がみられた場合は、遺伝子検査を行い鑑別する必要があります。
治療  治療は食事改善、アミノ酸製剤および肝庇護剤などの投与を行います。消化器疾患のある場合には、その治療も行います。
また嘴の形成不全は、定期的にトリミングを行います。
予後  栄養性羽毛形成不全も投薬の効果は換羽が起こるまで確認できません。換羽が起こるまで継続して投薬を行う必要があります。
嘴形成不全を一度起こすと、栄養が改善されても変形が治らないこともあり、この場合は定期的なトリミングが必要となります。

 

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