鳥の歩き方と止まり方

鳥は人と同じ2足歩行の動物です。鳥の歩き方には、「足を交互に出す」と「両足で同時に跳ねる」の2種類があります。目(Order)によって歩き方はほぼ決まっており、飼い鳥ではインコ・オウム類が「足を交互に出す」、フィンチ類が「両足で同時に跳ねる」です。歩き方はその鳥の食性もよく表しており、「足を交互に出す」種類は地上で採食をする傾向が強く、「両足で同時に跳ねる」種類は樹上で採食をする傾向が強いです。ちなみにスズメ目には例外的な歩き方をする種類がおり、主に地上で行動するセキレイやツグミは「足を交互に出す」種類であり、カラスに至っては「足を交互に出す」と「両足で同時に跳ねる」のいずれも可能で、組み合わせた歩行もできます。
インコ・オウム類とフィンチ類は樹上棲であるため、止まり木に止まって生活させるのが基本です。インコ・オウム類とフィンチ類では足の形状が異なるため、止まり方も異なります。インコ・オウム類は、第1趾と第4趾が後方、第2趾と第3趾が前方です。フィンチ類は、第1趾が後方、第2~4趾は前方です。フィンチ類よりもインコ・オウム類の方が、握力が強い傾向があり、物を掴む能力が優れています。

歩行異常の原因

歩行には錐体路(UMN:上位運動ニューロン)、錐体外路系(小脳、基底核、錐体外路)、前庭神経系、LMN(下位運動ニューロン)、深部知覚、視覚、筋肉、上下肢骨、脊椎、関節などの機能の密接な相互関連が必要です。これらの機能の障害により様々な種類の歩行異常が起こります。
鳥の移動手段は飛ぶことが主であり、またケージ内では止まり木に止まっているため、実際には前方に歩行することは哺乳類に比べ少ないです。よって脚の異常を脚弱ということも多いです。脚弱の原因は、歩行異常と同じです。
歩行異常の原因には、麻痺/運動失調、疼痛、体型異常があります。またその他の歩行異常に、ハイヒール歩行があります。ハイヒール歩行とは、中足関節を接地せず、趾先で立っている状態をさします。主にセキセイインコにみられ、伸び上がったり、人に向かって飛びつくといった挙動異常の一環としてみられることが多く、精神不安定が原因とみられます。

麻痺/運動失調による歩行異常の鑑別診断

 

麻痺/運動失調の原因には、中枢性神経障害と末梢性神経障害があります。(表1)障害部位の特定と鑑別診断には、神経学的検査、レントゲン検査および血液生化学検査を行う必要があります。犬猫では、様々な神経学的検査が可能ですが、鳥は小さく、また飛翔能力に問題が無ければ飛んでしまうため、保定下での検査を行うのが一般的です。

表1:麻痺/運動失調による歩行異常、脚弱の原因と臨床徴候

障害部位 原因 臨床徴候
中枢性神経障害 UMN障害
・外傷、脳脊髄炎、中毒、肝性脳症、腫瘍、医原性など
筋痙縮による麻痺/不全麻痺
ナックリング
錐体外路系障害
・外傷、脳炎、中毒、肝性脳症、腫瘍、医原性など
運動失調
旋回運動
中枢性前庭障害
・外傷、脳炎、中毒、肝性脳症、腫瘍、医原性など
運動失調
旋回運動
平衡維持困難
斜頸
眼振
片側不全麻痺
固有受容感覚不全
末梢性神経障害 LMN障害
・多発性神経炎
・低Ca血症
・脊椎変形/骨折
・腎肥大、腫瘍
・精巣肥大、腫瘍
・関節症による圧迫
筋弛緩による麻痺/不全麻痺
運動失調
ナックリング
感覚神経障害
・多発性神経炎
・低Ca血症
筋弛緩による麻痺/不全麻痺
運動失調
末梢性前庭障害
・内耳炎
・腫瘍
運動失調
旋回運動
平衡維持困難
斜頸
眼振

 

身体検査による非神経学的疾患との鑑別
 最初に全身的な身体検査を行い、神経学的疾患と混乱しやすい病態を排除する必要があります。両側の股関節脱臼や肢骨骨折は、脊髄損傷時の対麻痺に似た症状がみられます。また血行障害による筋萎縮は、LMN障害による麻痺に類似します。
運動失調と衰弱も鑑別する必要があります。運動失調は動揺歩行やよろめき、ケージの伝い歩きが出来ないといった特徴があります。衰弱は栄養状態が悪く、脱水が見られ、膨羽嗜眠があり、力が入らない状態です。運動失調のある鳥が衰弱している場合は、鑑別困難です。

筋緊張検査による鑑別
 筋緊張の検査は、病変が中枢性か末梢性かを鑑別する上で重要です。麻痺の原因には、筋痙縮と筋弛緩があります。筋痙縮はUMN障害時にみられ、筋弛緩はLMN障害や感覚神経障害時にみられます。
筋緊張の評価は、伸展に対する抵抗性で評価します。まず鳥を保定し、趾を持って脚を曲げたり、伸ばしたりします。伸展に対する抵抗が大きければ筋痙縮であり、抵抗がなければ筋弛緩です。

ペダル反射による鑑別
 ペダル反射は屈筋反射として知られ、疼痛刺激によって脚を引く反射が含まれます。検査法はまず鳥を保定し、趾を爪先で挟んでみます。正常では脚を引っこめる反応が起こります。UMN障害時にはこの反射がみられますが、脚の屈曲が持続します。LMN障害ではこの反射が完全または部分的に欠如します。

排泄孔反射による鑑別
 哺乳類では肛門反射と呼ばれますが、鳥は肛門ではないため排泄孔反射と筆者は呼んでいます。直接的な脚の検査ではないですが、仙椎部と馬尾の評価をする上で重要です。検査法はまず鳥を保定して排泄孔を確認し、次に綿棒を用いて軽く孔に触れてみます。通常は括約筋の収縮がみられます。この反射がみらず、弛緩している場合は、仙椎部の脊髄分節や馬尾を犯すLMN障害の存在を示しています。

レントゲン検査による鑑別
 神経疾患が疑われた場合は、頭頸部および脚を含む体幹部のVD像、LL像撮影を行います。くる病・骨軟化症による脊椎変形、脊椎骨折、脊椎症は、LMN障害、感覚神経障害を引き起こします。また腎肥大・腎腫瘍、精巣腫瘍は、仙椎部の脊髄分節への圧迫によりLMN障害、感覚神経障害を引き起こします。発情の強い雌鳥は、多骨性過骨症性の関節症を引き起こし、疼痛の他、圧迫により、それ以端のLMN障害、感覚神経障害を引き起こします。
頭部撮影で、鼓室胞の混濁がみられる場合は、内耳炎による末梢性前庭障害が疑われます。

血液検査による鑑別
運動失調の鑑別には、血液生化学検査も同時に行います。神経疾患のほとんどで、CPKの上昇がみられます。血中のCa濃度が低い場合は、神経の伝達障害による麻痺が考えられます。血中のアンモニア濃度が高い場合は、肝性脳症が考えられます。白血球の上昇がある場合は、感染、炎症の存在が考えられます。

疼痛による歩行異常の鑑別診断

 

身体検査による鑑別
 身体検査で疼痛があるかどうかを見る場合は、患部を触ってみて鳥が嫌がるかどうかで判断します。嫌がる場合は、暴れたり鳴いたりします。しかし保定されること自体が嫌で暴れる場合もあるので、判断が難しい場合もあります。またあまりにも痛いと力を全く入れず、麻痺と鑑別がつかない場合もあります。


骨折している場合は、触ると折れている部位がゴリゴリという感覚があり、周囲の筋肉に内出血がみられます。
外傷性の脱臼の場合は、股関節の脱臼では脚が外転(開脚してしまう)し、膝関節の脱臼では膝を曲げられず伸ばしたままになることが多いです。
足(中足関節または趾)の裏の発赤や腫脹がある場合は、趾瘤症であることが多いです。
趾関節、中足関節、足根関節に腫脹があり、内部に白から黄白色の貯留物がある場合は、痛風結節か膿瘍です。

レントゲン検査による鑑別
 外傷性の疼痛による歩行異常がある場合には、レントゲン検査をします。骨折、脱臼の診断ができます。

血液検査による鑑別
 疼痛による歩行異常で血液検査が必要になる病気は、痛風です。痛風の場合、尿酸値の上昇がみられ、膿瘍と鑑別することができます。

体型異常による歩行異常の診断
 体型異常による歩行異常を示す病気には、スプレーレッグ、趾曲り、クル病、骨軟化症があります。これらは特徴的な外貌や飼育状況の聴取で診断できます。病気の程度を診断する上で、身体検査やレントゲン検査を行います。

身体検査による診断
 スプレーレッグは、両側または片足の脚伸びて開脚しているのですぐに分かります。
趾曲りは、趾が内側に湾曲した状態です。
クル病と骨軟化症は、全身の骨の変形です。脚や脊椎が変形しています。

レントゲン検査による診断
 ペローシスやクル病、骨軟化症の時の骨の変形の確認を行います。

歩行異常がみられる病気

中枢性神経障害

頭部外傷
原因  壁やガラスへの激突、戸に挟む、誤って踏んでしまうなどの事故による頭部への衝撃が原因です。
発生  部屋での放鳥時に受傷することから、人に馴れている飼鳥に発生が多いです。ケージ内で発生することは稀です。
症状  脳震盪、脳挫傷によって、主に運動失調、後弓反張、捻転斜頸、眼振、平衡維持困難、痙攣、旋回運動などがみられる。また片側不全麻痺、筋痙縮による麻痺/不全麻痺、ナックリングなどが起こることもあります。
頭部皮下の内出血や眼瞼の腫脹もよくみられます。ブンチョウでは頭部受傷時に眼に衝撃が加わると、徐々に眼圧を失うことがあります。
診断  受傷直後からの中枢性神経症状の発現により暫定診断を行います。安静を保つために神経学的検査は実施困難です。人のようにMRIでの脳内検査はできません。
治療  受傷直後の神経症状には、ステロイド剤の投与が有効です。

 

重金属中毒症
原因  鉛、亜鉛、真鍮、錫などの誤飲による重金属中毒症がよくみられます。摂取源としては、カーテンのバランサー、釣りの重り、鉛を使用した子供のおもちゃ、絵の具のチューブ、キーホルダー、ハンダなどがありますが、摂取源が不明なことも多いです。
発生  重金属中毒症は、オカメインコに最も多く発生し、時折セキセイインコ、ラブバード類にも発生がみられます。放鳥時に摂取することが多いため、人に馴れた鳥に発生します。
症状  重金属中毒症の最も特徴的な症状は、濃緑色便と強い吐き気です。歩行異常としては運動失調が多くみられますが、特にラブバード類において筋痙縮による麻痺/不全麻痺、ナックリングが起こることがあります。
診断  レントゲン検査にて、そ嚢、胃、腸内の金属片を検出します。

治療  皮下輸液または骨髄内輸液による体液補正と解毒を中心に行います。合併症として腎不全、消化管停滞が起こるため、その治療も行う必要があります。
予後  早期発見と適切な治療が施されれば、回復率は高いです。しかしにラブバード類の筋痙縮による麻痺/不全麻痺、ナックリングは後遺症として残ることが多いです。

 

肝性脳症
原因  肝疾患による高アンモニア血症が原因です。肝疾患は脂肪肝症候群によるものが多いです。脂肪肝症候群は、過食や運動不足、ヨード不足性甲状腺ホルモン分泌低下による肥満、雌の慢性発情による継続する高脂血症によって起こります。
発生  セキセイインコ、オカメインコ、コザクラインコなどのインコ類に多くみられる。
症状  肝性脳症時にみられる歩行異常は、運動失調です。また精神不安定によるハイヒール歩行や間代性痙攣も特徴的です。
脂肪肝症候群による肝機能低下によって、特徴的な外皮系症状もみられます。セキセイインコでは、青色羽毛の白色化や黄色化、緑色羽毛の黄色化、正羽の粗雑化、風切羽・尾羽の狭細化、ダウンフェザーの伸長がみられます。オカメインコでは、羽毛の黄色化(Yellow Feather Syndrome)が特徴的です。ラブバード類では、緑色羽毛の赤色化がみられます。またほとんどの鳥種において嘴の過長と出血斑、爪の出血斑がみられます。
診断  肝疾患時の特徴的な外貌を呈し、神経症状がみられた場合はすぐに暫定診断を行い、治療を開始します。検査が可能な状態であれば、血液検査、レントゲン検査を行い肝酵素の上昇と高アンモニア血症、肝肥大を確認し、他の疾患との鑑別を行います。
治療  運動失調や痙攣がみられた場合は、早急に高アンモニア血症の改善を行う必要があります。基本的には入院治療とし、積極的な補液治療を行います。また肝疾患用処方食の使用も高アンモニア血症改善に有用です。

 

腫瘍
原因  脳や眼窩内、頭骨に形成された腫瘍により、脳が圧迫を受けることが原因です。
発生  セキセイインコ、ブンチョウに時折みられます。
症状  腫瘍による脳の圧迫でみられる歩行異常は、運動失調です。また盲目となることも多く、探りながら移動するため歩行異常にみえることがあります。その他旋回運動、捻転斜頸、後弓反張、間代性痙攣といった神経症状もみられることがあります。
眼窩内腫瘍では眼球突出、頭骨の腫瘍では頭部の隆起がみられます。
診断  眼球突出があった場合は超音波検査を行い、眼窩内に腫瘤形成がないかを確認します。頭部の隆起があった場合は、レントゲン検査を行い骨腫瘍かどうかの鑑別診断を行います。
MRI撮影が困難であるため、脳腫瘍の診断は困難です。
治療  頭部に形成された腫瘤は、皮下腫瘍以外摘出は困難です。

 

脳障害
原因  脳内の生前検査が困難なのと、死後検査の研究も進んでおらず、原因不明なことが多いです。外傷の後遺症、ウイルス性脳炎、老齢性変化などが考えられます。
発生  インコ類に見られますが、特に老齢のコザクラインコ、ボタンインコに多くみられます。
症状  多くの鳥で軽度の念転斜頚がみられ、ヨロヨロした運動失調状態となります。時に視力にも異常が出ます。
診断  レントゲン検査と血液検査でほかの原因を排除した上で、暫定診断を行います。
治療  原因が分からないので、適切な治療法はありません。神経に作用するビタミン剤の投与、念転斜頚がある場合には、鎮暈剤を投与し経過観察を行います。

末梢神経障害

多発性神経炎(脚気)
原因  幼鳥期のビタミンB1不足した状態での炭水化物の多給が原因です。特に市販アワ玉にお湯をかけた物のみをさし餌している場合に起こります。アワだけでは成長期に必要な蛋白質とビタミン、ミネラルを補うことはできず、また炭水化物に偏っているため、ビタミンB1の消費を増大させ欠乏症が起こります。これによって特に感覚神経軸策に炎症が起こります。
発生  以前はセキセイインコの幼若鳥に多くみられましたが、パウダーフードが一般的になってからは、発生の減少しています。
症状  麻痺性脚弱および脚の挙上がみられます。脚弱と挙上は感覚神経麻痺および神経炎による疼痛によって起こると考えられています。症状は止まり木からの落下後や飛翔後の着地後などの脚に衝撃が加わった後に発現することが多いです。麻痺性脚弱によって足根関節を接地させた歩行を示します。その他にも翼の下垂、呼吸 促迫などがみられることがあります。

診断  発症年齢が幼若鳥であるということと食事内容、特徴的な症状から診断を行います。反射消失などの神経学的検査は困難です。
また鑑別すべき疾患として亀裂骨折や若木骨折があります。これらの骨折は外観上問題がないようにみえ、同様に脚の挙上がみられるため、レンントゲン検査をおこなう必要があります。
治療  パウダーフードの使用や熱変性させないなど適切な食事に切り替えます。
治療薬は、ビタミンB群を用います。疼痛がある場合は、鎮痛剤を使うこともあります。

 

低カルシウム血症
原因  カルシウム、ビタミンD不足した状態での産卵や慢性発情による度重なる産卵が原因です。
発生  人の環境下で産卵する全ての鳥種に起こりえます。
症状  血中カルシウム濃度低下により神経伝達障害および筋収縮障害が起こり、全身の脱力がみられます。特に脚麻痺によって立ち上がれなくなり、脚弱になります。その他呼吸筋麻痺による呼吸促迫や時に間代性痙攣を起こすことがあります。
症状は産卵後あるいは卵殻形成後の産卵前に発症することが多く、産卵前に発症した場合は、卵塞になります。
診断  産卵前後に脱力があった場合に本症を疑いますが、確定診断には血中カルシウム濃度の測定を行う必要があります。しかし実際には、状態が悪いため血液検査はできないことが多いです。
またその他の抹消神経障害との鑑別にはレントゲン検査を行う必要がありますが、産卵中にもかかわらず多骨性過骨症がみられないことも本症例を疑う重要な所見です。
治療  緊急時にはカルシウムの非経口投与を行います。カルシウムの注射液は本来静脈内投与ですが、緊急時に小型鳥に対して静脈内投与は困難であるため、筋肉内あるいは輸液剤で稀釈して皮下投与を行います。
卵塞症を起こしている場合には、圧迫排出を行います。

 

脊髄障害
原因  脊椎外傷、過産卵性骨軟化症やクル病による脊椎変形、脊椎奇形などによる脊髄障害により、運動失調を呈します。
症状  症状の程度は脊髄障害の程度により様々ですが、脚力・握力はあるものの、脚がうまく使えない、バランスが取れないといった運動失調を示すのが特徴です。軽度な運動失調の場合、不完全麻痺や疼痛性歩行異常との鑑別が困難なことがあります。複合仙骨の障害では排便困難、排泄孔反射消失がみられることがあります。
診断  レントゲン検査にて、脊椎障害の確認を行います。また脚力・握力の確認を行い、異常がないことを確認します。しかし脊椎外傷直後では、完全麻痺との鑑別は困難です。
治療  脊椎外傷直後は、ステロイド剤静脈内または筋肉内投与を行います。骨折がなければ、回復が望めることもあります。
脊椎変形・奇形では、回復は困難です。神経に作用するビタミン剤の投与を行い経過を観察します。
排便障害がみられる場合は、一日に複数回の腹部圧迫による排便補助が必要になります。

 

腎腫瘍
原因  鳥類の腎臓は複合仙骨内に入り込んでおり、坐骨神経はその直下に位置しています。腎臓の腫瘍化により坐骨神経が圧迫を受け、脚の完全・不完全麻痺が起こります。
発生  主にセキセイインコにみられますが、まれにラブバードにもみられることがあります。
症状  両側または片側性の麻痺性脚弱、ナックリングがみられます。

診断  レントゲン検査にて、腎腫瘍を確認します。消化管とのコントラストが付かない場合は、消化管造影を行うと、腎臓の腫大が確認しやすいです。また超音波検査により腎臓の腫大を確認します。

治療  腎腫瘍は通常両側性に発生するため、摘出は困難です。腎機能の改善、支持療法を治療方針とし、尿酸排泄促進剤の投与を行います。

 

精巣腫瘍
原因  鳥類の精巣は腹腔内背側に位置し、腎臓の腹側に精巣の頭側から尾側にわたる靭帯によって固着しています。精巣の腫瘍化により腎臓に圧迫が加わり、これによってその直下に位置する坐骨神経に圧迫が加わり、脚の完全・不完全麻痺が起こります。精巣腫瘍が腹腔内をほとんど占めるほどに成長した末期にみられます。
発生  主にセキセイインコにみられます。
症状  片側性、時に両側性の麻痺性脚弱、ナックリングがみられます。ナックリングは腎腫瘍ほどはみられません。麻痺性脚弱は腫瘍化した精巣側にみられます。
精巣腫大および腹水貯留による腹部膨大がみられます。
診断  レントゲン検査にて、精巣腫瘍を確認します。消化管とのコントラストが付かない場合は、消化管造影を行うと、精巣の腫大が確認しやすいです。またエストロジェン分泌性のことが多いため、多骨性過骨症がみられることが多いです。


超音波検査により精巣の腫大を確認します。精巣腫瘍は片側性のことが多いです。また時折腫瘍周囲に嚢胞形成を伴うこともあります。

治療  最も有効な治療法は摘出術ですが、リスクの高い手術となります。
手術をしない場合には、腫瘍増大の抑制を治療方針とし、エストロジェン分泌性の腫瘍であれば、ホルモン療法を行います。

 

変形性関節症
原因  変形性関節症は老齢性、体重過多による関節への負担、多骨性過骨症を繰り返すことによって、特に膝関節、足根関節に骨棘形成、関節包への石灰沈着を起こします。
発生  老鳥、肥満している鳥、慢性発情を呈す雌鳥に多くみられます。
関節症が起こることが多い関節は、膝関節、足根関節です。また肩関節もなりやすく、この場合飛ぶことができなくなります。
症状  関節症を起こした部位によって症状は異なりますが、関節の可動域が低下して、曲げ伸ばしが正常にできなくなります。悪化すると完全に関節が動かなくなります。このことによって歩き方がぎこちなくなります。痛みが出ると、脚を挙上します。
診断  レントゲン検査にて変形性関節症を確認します。
治療  一度変形した関節を元に戻すことはできませんので、進行を抑えることを治療方針とします。肥満や発情がある場合は、食事制限をして体重を正常に戻して発情を抑制し、悪化を防ぎます。疼痛がある場合には、鎮痛剤を使用します。

疼痛による歩行異常

外傷
原因  誤って踏む、落ちる、挟むといった事故による骨折、脱臼、捻挫、打撲、損傷などの疼痛によって起こります。
発生  骨折、脱臼、捻挫、打撲は馴れている鳥に多く、特に風切羽を切っており、飛翔・逃避能力が劣った小型鳥に多いです。脱臼は主に膝関節や股関節にみられますが、発生は少ないです。
損傷はネコやカラスなどの外敵に襲われる、同居鳥との喧嘩、ドアに挟むことによって起こすことが多いです。
症状  疼痛によって脚を挙上します。
骨折は脛足根骨に多く発生し筋肉の損傷が大きい場合、遠位端が容易に内転または外転します。
膝関節の脱臼は側副靭帯の損傷程度によってははめることができますが、すぐに外れてしまうことが多いです。
診断  レントゲン検査により、状態の確認を行います。概観上問題がなくとも、亀裂骨折や脱臼を起こしていることもあります。 また若鳥では、骨が柔らかいため、完全には折れずに若木骨折を起こしていることもあります。

頸足根骨骨折

頸足根骨の若木骨折

治療  骨折の場合は主にピンニング術による接合術を行います。
飼い主によっては麻酔に抵抗があったり、慢性発情した雌鳥で、多骨性過骨症によってピンの挿入が困難な場合は、ギブス固定や安静(ケージレスト)にて治癒させる場合もあります。この場合は、ズレて骨が癒合します。
膝関節脱臼は脛足根骨が内方に脱臼することが多く、指ではめた後筋肉ブロッキング術により再脱臼を防ぎ、治癒させます。股関節の脱臼は、外科的治療は困難です。
疼痛管理には鎮痛剤を用いますが、積極的には用いられません。鳥は痛みが取れると患肢を使ってしまうからです。
骨折の手術に関してはコチラ

 

趾瘤症
原因  肥満による体重増加によって足底の継続する負荷により、胼胝腫が形成されたものです。胼胝腫とはいわゆる“たこ”のことであり、結合織の線維成分や基礎物質が増加して硬く緻密となった組織のことです。
細過ぎまたは太過ぎの不適切な止まり木や餌箱の縁に止まっているなどによる偏った足底への負荷や床が硬いなどが主な原因であり、肥満による体重増加やビタミンA欠乏がこれを悪化させます。また何らかの原因により片足を挙上している場合、正常脚の足底に発生することもあります。
飼育環境や一次疾患が改善されない場合、状態は徐々に悪化し細菌感染を併発すると、潰瘍形成や腱断裂、骨膜炎を起こし、疼痛により起立困難となります。
発生  全ての鳥類に発生しますが、飼い鳥ではインコ・オウム類、ウズラ、ニワトリ、アヒルに多くみられます。またペンギン類や猛禽類にも多く発生しています。
症状  軽度なものでは無症状ですが、進行するにつれ徐々に疼痛を示すようになります。
患部は軽度な発赤とびらんから始まり、徐々に腫脹、硬化して、乾酪病変を形成します。細菌感染を併発すると、内部に膿が貯留することもあります。
診断  足床部の視診、触診により診断します。重症例ではレントゲン検査を行い、骨への影響を確認する必要があります。
治療  根本的な原因を改善する必要があるため、まず止まり木、床環境の改善を行います。インコ・オウム類では、適切な太さの止まり木に交換し、止まり木には伸縮テープを巻いて、足底への負荷を軽減します。ウズラ、ニワトリ、アヒルなどでは、プラスチックやフローリング、コンクリートなどの硬い場所を歩かせないようにし、人工芝や低反発スポンジを敷いて足底への負荷を軽減します。潰瘍がひどい場合は、創傷被覆剤で、傷を保護しテーピングを行うとよいです。
肥満した個体は正常体重に減量する必要があります。また適切な食事への改善も必要です。
治療には抗生物質、鎮痛剤を用います。

 

痛風
原因  高尿酸血症によって血液中に溶け切れなかった尿酸塩が結晶化し関節、特に中足関節、趾関節、足根関節部の関節内および皮下に貯留し、結節を形成します。高尿酸血症はビタミンA欠乏症による尿細管扁平上皮化生による尿酸排泄障害が原因であるといわれています。
発生  飼い鳥ではインコ類にみられ、特に高齢のセキセイインコに多いです。ブンチョウ、カナリヤなどのフィンチ類では高尿酸血症はみられますが、痛風結節の形成はみられません。
症状  結節形成前に関節に発赤腫脹と疼痛がみられることもありますが、通常は突然結節が出現し、進行が速いことが多いです。結節形成がみられた関節は、硬化し稼動しなくなります。多くは趾が開いた状態で固まり、疼痛も伴い歩行異常、起立困難がみられるようになります。

診断  痛風結節の出現と血液検査で高尿酸血症を確認します。
治療  治療は高尿酸血症治療と対症療法を行います。高尿酸血症治療には尿酸排泄促進剤と尿酸合成阻害薬を用います。疼痛には、鎮痛剤を用います。

体型異常による歩行異常

スプレーレッグ(開張肢)
原因  はっきりした原因は分かっていませんが、同じ親から生まれることが多いため、遺伝性疾患と考えられています。
スプレーレッグの症状は、ペローシスに類似していますが、ペローシスはニワトリやアヒルなどに発生する栄養性疾患で、腱はずれによって開脚します。
発生  多くの鳥種に発生しますが、飼い鳥では自家繁殖したインコ類に多いです。ブンチョウやカナリヤにも発生します。
症状  片側性または両側性に大腿骨が内転し、脛足根骨が外転することにより開脚します。重症例では、膝関節、足根関節の脱臼が起こることから、腱はずれとも呼ばれています。
胸部で体重を支えて成長するため、胸骨の変形や胸郭が浅くなることがあります。胸郭が浅くなると呼吸器の圧迫のため、呼吸促迫になることがあります。
診断  典型的外貌により診断します。
治療  成長期である幼鳥であれば、まずテーピング固定にて矯正を行います。完全に正常な状態には戻りませんが、生活に支障がない程度に回復することが多いです。
すでに若鳥にまで成長し、骨の成長が終わっている場合、テーピングでは矯正できないこともあります。無理なテーピングは、膝関節または足根関節の脱臼を引き起こします。よって若鳥では、骨切りピンニング術にて整形を行います。
スプレーレッグの手術に関してはコチラ

 

趾曲り
原因  ビタミンB不足による先天性奇形といわれています。趾屈腱の伸展が不十分なため、趾が完全に伸展せず、趾が内側へ湾曲する病気です。
発生  多くの飼い鳥に発生します。顕著な異常ではないため、幼鳥時には気づかないことも多く、購入した個体および自家繁殖した個体ともにみられます。
症状  インコ類およびフィンチ類ともに趾が内側に湾曲します。また趾も短く、足全体が矮小なことが多いことから握力が弱く、止まり木から落ちやすくなります。


足底部で体重を支えていないことから、趾瘤症を併発することもあります。

診断  典型的症状により診断します。
治療  特異的な治療法はなく、矯正も難しいです。止まり木に伸縮テープを巻いて足底の保護を行います。

 

クル病
原因  カルシウム・ビタミンD不足、不適切なカルシウム/リン比が原因ですが、多くは市販粟玉にお湯をかけたもののみの給餌や一日の給餌量が少ないことが原因です。
発生  幼若鳥に発生します。
症状  脛足根骨湾曲によるO脚、大腿骨変形による開脚などにより歩行異常を示します。また烏口骨変形による翼の挙上または下垂、肋骨変形による胸郭狭窄によって呼吸促迫がみられることもあります。
診断  脚の変形や矮小体型、不自然な歩行、レントゲン検査での骨格確認よって診断を行います。また幼鳥期の食事内容の聴取も診断の一助となります。
治療  変形した骨格を治すことは困難であるため、適切な食事内容によって進行を防ぐ必要があります。

 

骨軟化症
原因  カルシウム・ビタミンD不足した状態での慢性的な産卵が原因です。
症状  骨格変形、長骨変形により歩行異常を示します。
診断  麻痺性、疼痛性以外の歩行異常があった場合はレントゲン検査を行い、骨格の確認を行います。脊椎が変形した場合には、脊髄障害による運動失調が出ることがあります。

治療  変形した骨格を治すことは困難であるため、食 事改善、発情抑制を行います。

 

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