【連載】第5回:ストレス分類と対処法

羽毛損傷行動の学習のメカニズムとステージについて解説しました。ここまで鳥のストレスには、環境変化や様々な出来事、また逆に変化がないことがストレスになると説明してきました。今回は、鳥が感じているストレスを分かりやすく分類し、その対処法について解説します。

鳥のストレスと対策

鳥のストレスを分類すると次の図のような関係になっています。日常的には、孤独、退屈、性的欲求不満が絡み合ったストレスを形成しており、変化や出来事には不安、恐怖、嫌悪のストレスを感じています。

孤独

孤独は、1羽飼いの鳥に起こりやすく、飼い主さんの不在同種鳥との社会的交流の不足によって起こります。本来鳥は群れで生活し、ペアで行動するため、1羽での生活は習性とはかけ離れた飼い方となります。人が少し離れただけでも呼び鳴きするのは、離れないようコンタクトを取ろうとしており、不安を起こす原因となります。離れようとした時に鳴いたり、落ち着かなくなったりすることを分離不安といいます。分離不安は、羽毛損傷行動と関連性が強いことが分かっています。

対策:最も単純な解決方法は、常に一緒にいてあげることですが、在宅ワークしている人や主婦の方でないかぎり実現は難しいと思います。分離不安は、気質だったり、ヒナの時の体験が影響しています。加齢とともに改善してくることもありますが、治すのはなかなか難しいです。そこで対策としては、寄り添うものを作ってあげることです。例えば鏡や鳥型のぬいぐるみやおもちゃ、三角テントなどです。もちろんこれらを鳥が怖がらずに気に入ってもらえなければ効果はありません。その他、テレビをつけておく、飼い主さんの写真やビデオを見せておく方法もあります。

退屈

野生のボウシインコは、採食行動に1日に4〜6時間かけますが、飼われているボウシインコは、1日に30〜72分しか食事に時間がかからないことが報告されています。野生では餌探しに時間がかかるので、生きるために時間を費やしています。ところが餌を探す必要がない飼い鳥は、その分やることがなくなっています。一見何もしなくても生きていけるのは幸せなように見えますが、何もすることがないというのは、退屈で非常にストレスとなります。

対策:退屈の対策は、環境エンリッチメントです。エンリッチメントは生活を豊かにするという意味であり、飼育動物の正常な行動の多様性を引き出し、異常行動を減らして、動物の福祉と健康を改善するために、飼育環境に対して行われる工夫を指します。環境エンリッチメントはその機能や用いる素材などから、分類することができます。

採食エンリッチメント

動物が採食行動に費やす時間を延長させたり、種に特有の採食行動のレパートリーを発現させることを目的として、採食環境を多様にする取り組みのことを採食エンリッチメントといいます。いわゆるフォージングのことです。

フォージングボール 中に餌を入れて、鳥が転がすと穴から餌が出ます。

感覚エンリッチメント

視覚や嗅覚、聴覚などさまざまな感覚刺激を用いるものを感覚エンリッチメントと呼びます。例えば、視覚刺激を用いたエンリッチメントとしては、同種他個体が見える場所で飼育したり、映像が好きな鳥にはテレビやビデオを見せたりします。また、警戒心の強い鳥に対しては、人の視線を避けられるような構築物を設置します。フレーバーの強いペレット による嗅覚刺激を用いたエンリッチメント、同種他個体の鳴き声を再生したり、音楽を流す聴覚刺激を用いたエンリッチメントなどがあります。

物理エンリッチメント

鳥を飼育する物理的な空間に手を加えるものを物理エンリッチメントと呼びます。例えば、アスレチックやロープ渡りすることは物理エンリッチメントです。他にも流木や自然木の枝の使用など空間利用するうえでの選択肢を増やすことで活動量の増加などが期待できます。

ニーム吊り橋 鳥が渡ったり、ぶら下がったりして遊びます。

認知エンリッチメント

鳥が持つ認知能力が発揮できるような機会を提供しようとするものを認知エンリッチメントと呼びます。鳥は、本来生息する野生環境でさまざまな認知能力を駆使して暮らしています。しかし単調な飼育環境ではそうした認知能力を発揮する機会が乏しくなります。そのため認知エンリッチメントによって認知能力を発揮する機会を提供し、認知的な刺激を与えることで生活に張りがでるようになります。認知エンリッチメントは、主に採食エンリッチメントと組み合わせて用いられ、複雑な操作や道具使用を要求される装置を用いた給餌が代表的な方法となります。

パズルフィーダー 上から回すと徐々に餌が下に落ちて行きます。

性的欲求不満

鳥が本能として持っている一夫一婦性のペアを作るという習性は、生きていく上で大きな役割を占めています。人に育てられた鳥は、人とペアを組もうとしますが、常に一緒行動できないことや繁殖行動ができないことは大きなストレスになります。また自分がペアだと思っている人が、他の鳥やペット、人と仲良くしていると嫉妬をします。またヒナの時に鳥と過ごした経験のある鳥は、鳥とペアを組もうとしますが、必ずしもアプローチが上手くいってペアを組めるとは限らず、避けられ続けると性的欲求不満になります。

対策:鳥も人と同じようにペアを組む相手には好みがあります。決められた空間内での人と鳥との関係性をこちらの思惑通りに解決することはできません。人をペアと思っているようでしたら、その方が他の人や鳥とコミュニケーションしているところを見せないようにします。鳥どおしのペアリングが上手くいかないようであれば、他の個体をお迎えする方法もありますが、必ずしも上手くいくとは限りません。安易な多頭飼い、多種飼いは避けなければなりません。

不安・恐怖

日常的に最も多い不安は分離不安ですが、その他にも様々な不安や恐怖があります。家族人数や鳥数の変化、飼い主さんの夫婦喧嘩、家族や鳥の病気、来客、ぺットホテル、ケージの変更、新しいおもちゃの導入、部屋の模様替え、新しい家具やカーテンの導入、リフォーム、引越し、地震、台風、カラスやネコの襲来など、1回のきっかけでも羽毛損傷行動を始めることがあります。

対策:不安や恐怖は人の努力だけでは避けられないことばかりだと思います。不安や恐怖を強く感じる仔の場合は、できる限り急な変化を起こさないよう気をつけましょう。

嫌悪

鳥が嫌ことが日常的に起こるとストレスになります。特に多頭飼いや多種飼いで起こりやすく、不仲な鳥との同居、いじめ、いたずら、追い払われる、嫌いな鳥からのアプローチなどが嫌悪ストレスとなります。

対策:鳥どおしの関係性をよく観察し、仲が良さそうに見えても喧嘩をするようであれば、ケージを分けることも検討しなければなりません。またいじめや過剰なアプローチが起こっているようであれば、放鳥のタイミングを分けることも検討しましょう。

今回は鳥のストレスと対処法について解説しました。次回は、羽毛損傷行動の治療について解説します。

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