新型コロナウイルス は鳥に移るか?
現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、私たちの生活は一変し日常生活を奪ってしまいました。 これまで経験したことのない 非常事態を何とか乗り切らねばなりません。そんななかで愛鳥家にとって心配なことといえば、「新型コロナウイルスは鳥に移るのか?」という疑問ではないでしょうか。今回は、この疑問に現在分かっている範囲で答えたいと思います。
愛玩動物と動物園動物への感染状況
・2 月下旬から3月上旬、香港において新型コロナウイルス感染者の飼育犬から PCR 弱陽性反応が出た事例が報告されました。その後の抗体検査で陽性判定が認められたことから感染が疑われる事例が発表されました。1
・ニューヨークやインドの動物園でのマレートラを含むネコ科動物6頭への感染や、ベルギーやアメリカでの猫への感染が報告されています。しかし、これまで愛玩動物から人 に感染したという事例は報告されていません。ベルギー当局も愛玩動物から人に感染する危険性はないとしています。
・ 中国やドイツにおける感染実験では、豚や鶏は非感受性であり、犬も殆ど感受性がないと報告されています。しかし、猫とフェレットは感受性が高く、猫は呼吸器症状を示さず消化器症状を示して、猫から猫への感染が見られると報告されています。2
・これらの知見にかんがみ、日本獣医師会は飼い主様に以下のような対応を推奨しています。
①感染した人と濃厚接触のあった愛玩動物が感染する可能性は否定できないことから、ご自身の愛玩動物を感染から守るためにも、飼い主がしっかりした感染防御の対応をとることが最も重要です。
②人から猫、猫から猫への感染の可能性が考えられることから、①のほか、猫は外に放さず室内で飼育することが適正飼養の観点からも望まれます。
③新型コロナウイルス陽性となった飼い主と接触のあった動物に臨床症状が認められた場合は、事前にかかりつけの獣医師と電話相談のうえ、獣医師の指示に従い動物病院で診察を受けてください。
鳥のコロナウイルス
・それでは次に、鳥に感染するコロナウイルスはいるのでしょうか?鳥に感染する、もしくは分離されたコロナウイルスは多数報告されています。
・家禽に感染するコロナウイルス由来の感染症には、ニワトリ伝染姓気管炎(IBV)があります。急性の呼吸器病で、届出伝染病に指定されています。自然宿主はニワトリであり、日本を含め世界的に発生があります。その他にコロナウイルス性腸炎があります。ブルーコム病とも呼ばれ、シチメンチョウのみに感染すると考えられています。
・野鳥においては、カモ目、コウノトリ目、ペリカン目、チドリ目、スズメ目、ツル目、キジ目での分離報告があります。3,4
・飼い鳥においては、ドバド5,6、メキシコアカボウシインコ7、オオハナインコ8での分離報告があります。
新型コロナウイルス は鳥に移るのか?
・それではいよいよ新型コロナウイルス は鳥に移るのかを考察しますが、その前に「移る」とは何かを説明しましょう。移るとは、病原体が伝染することです。伝染とは、他から体内に侵入した病原体で病気を起こすことです。そして伝染病とは、病気を起こした個体(人や動物など)から病原体が別の個体へと到達し、連鎖的に感染者数が拡大する感染症の一種です。全ての感染症が伝染病なわけではありません。
・感染とは、微生物が生体内に侵入し、生体内で定着・増殖し、寄生の状態になった場合を「感染した」といいます。感染が成立するためには次の3つの要素(感染の3要素)が必要です。ここでは鳥への感染が成立する際の場合を考えてみましょう。
①感染源:新型コロナウイルス感染症の場合は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を保有する人となります。発症しているかどうかではなく、無症状感染をしている場合でも、ウイルスを排泄しています。
②感染経路:感染している人から新型コロナウイルスが、感受性体に感染する経路です。飛沫感染が主体と考えられており、接触感染や換気の悪い環境では、咳やくしゃみなどがなくても感染があり得ると考えられています。新型コロナウイルス を保有する人が生活する環境に鳥がいた場合は、鳥が飛沫を吸引、あるいは羽についたウイルスを摂取する経路が考えられます。
③感受性体:新型コロナウイルスに対して鳥が感受性を持っていた場合、感受性体といいます。つまり感染が成立するためには、鳥が新型コロナウイルスに感受性があるかどうかが重要となります。
・ウイルスには宿主特異性というものがあり、感染する宿主(感染する人や動物)を広範囲に持つことはありません。たまたま人と動物に類似したウイルス感受性細胞があると、人獣共通感染症となります。感受性があるかどうかは、ウイルス表面にあるエンベロープという皮膜が関係しています。エンベロープに含まれる脂質は宿主細胞由来であり、エンベロープの脂質は宿主細胞の膜に類似しています。エンベロープは、ウイルス粒子の細胞への付着に関与しており、エンベロープに含まれる脂質と類似した構造を持った細胞が感受性があるということになります。
・それでは次にコロナウイルスの分類を見てみましょう。コロナウイルス は、現在4つの属に分類されています。9
新型コロナウイルスは、Betacoronavirus属に分類されています。鳥に見られるコロナウイルスは、Gammercoronavirus属とDeltacoronavirus属に分類されています。つまり新型コロナウイルスと鳥に感受性のあるコロナウイルスは、遺伝子的に遠いグループになります。
・以上の知見からかんがみるに、新型コロナウイルスが飼い鳥に移る可能性は、極めて低いと考えられます。しかしコロナウイルスは遺伝子変異が早いRNAウイルスであること、同じRNAウイルスである高病原性鳥インフルエンザウイルスが、ニワトリから人に移り、人から人に移る事例もあることから、絶対に大丈夫とは言い切れません。ウイルスの遺伝子変異は、誰も予測することができません。普段から換気に気をつけ、健康管理を心がけましょう。また野鳥が来るような場合は、鳥が外で野鳥の糞と接触しないよう気をつけましょう。
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