鳥の嘔吐とは、胃内容が強制的に食道、口腔を経て排出される現象をいい、吐出とは、そ嚢内容が強制的に食道、口腔を経て排出される現象を言います。見た目でどちらか判断をつけることは難しいですが、病気の原因や解剖学的特徴から推測するには、インコ・オウム類では嘔吐が多く、フィンチ類では吐出が多いと考えられます。
嘔吐・吐出は、脳髄質性(脳圧亢進、精神的因子など)、脳神経性(嗅覚刺激、視覚刺激、味覚刺激、前庭刺激、口蓋喉頭刺激など)、中毒性(内因性、外因性)、内臓性(通過障害、炎症など)、欠乏性(ビタミン欠乏など)、その他(寒冷、換羽による体力低下、乗り物酔いなど)の6つに分類されますが、ここでは中毒性、内臓性の嘔吐・吐出について解説します。

嘔吐・吐出の臨床症状

鳥は、犬猫のように嘔吐・吐出をする前に流涎がみられるようなことはなく、突然嘔吐運動をして食物を排出します。嘔吐運動は、鳥は横隔膜ないため、消化管の逆蠕動、そ嚢の急激な収縮および腹部筋肉によって引き起こされます。
セキセイインコなどのインコ・オウム類では、口を開け、頚部をしゃくりあげるような運動をした後、食物を口腔内へ排出します。吐物量が少なければ、そのまま飲み込んでしまうこともありますが、多くの場合は頭部を水平に振ることによって、周囲へ吐物を撒き散らします。この時、吐物は胃液やそ嚢粘液を伴っているため、頭部の羽毛に 吐物が付着し、羽毛が不正に逆立ったようになります。

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ブンチョウなどのフィンチ類が吐出することは少ないですが、トリコモナス症や甲状腺腫で見られることがあります。吐出動作はインコ・オウム類とは異なり、頚部をしゃくりあげるような運動は小さく、頭部を水平に震わせる行動を何度かして少しずつ吐出します。これはフィンチ類のそ嚢は頚部の右側に位置し、口腔に近いため容易に食物を排出でき、吐出に大きな動作が必要ないためと考えられます。

生理的な嘔吐・吐出

鳥では嘔吐・吐出は必ずしも異常ではないことがあります。これは生理的に起こる現象で、2つのケースがあります。種差はありますが、インコ・オウム類のオスは、発情期を迎えると求愛行動の1つとして、食物を吐出してメスに与えるといった行動をとります。これは発情吐出と呼ばれ、人の飼育環境は発情しやすいため、オスは1年を通してこの行動をとる個体が多くみられます。またインコ・オウム類のメスは、発情期終了後、または抱卵期終了後に、雛鳥がいなくても育雛期になってしまう場合があります。この原因はまだわかっていませんが、この時期のメスは自分の趾や止まり木などに餌を吐き戻しては、またそれを食べるといった行動を繰り返します。

嘔吐・吐出の鑑別診断

嘔吐・吐出を示す疾患としては、そ嚢炎が有名ですが、その他にも様々な疾患によって嘔吐・吐出が起こります。また実際には、細菌性そ嚢炎は発生が少なく、その他の鑑別すべき疾患を知らなければ、これに結びつけてしまう可能性があります。では病院ではどのように鑑別診断しているのかを説明していきます。

そ嚢液検査による鑑別診断(ファーストステップ)

そ嚢液検査により細菌叢の乱れが見られ、同時にマクロファージやヘテロフィルといった炎症性細胞の出現が見られた場合は、細菌性そ嚢炎を起こしている可能性があります。より診断を高めるためには、身体検査によりそ嚢壁の炎症の有無、培養検査などを行います。
そ嚢検査によりトリコモナスが検出されればトリコモナス症と診断できます。
そ嚢検査により仮性菌糸、酵母が検出されれば、通常カンジダ症と診断しますが、確定診断は培養によって菌種を同定しなければなりません。しかし臨床の場で真菌培養まではすぐには行いません。カンジダは、免疫力の低下や菌交代症、他の疾患に付随するといった2次的に出現することが多いため、主原因が他にないかどうか考慮する必要があります。

糞便検査による鑑別診断(ファーストステップ)

糞便検査によっても仮性菌糸および酵母はしばしば検出されますが、2次的に増殖していることが多いため、すぐに主原因をカンジダ症とは診断せず、次の検査ステップも検討します。
メガバクテリアが検出されれば、メガバクテリア症と確定診断されます。

併発症状からの鑑別診断(ファーストステップ~セカンドステップ)

併発症状として尿酸の黄色化や緑色化といった色調異常が見られた場合は、肝機能異常が考えられるため、血液検査を行います。これによって肝酵素、総コレステロール、アンモニア、総胆汁酸の上昇が見られれば、肝疾患による嘔吐・吐出と診断します。また同時にX線検査を行い、肝肥大によって消化管が圧迫・変位していれば、これも嘔吐・吐出の原因となります。
併発症状として濃緑色便が見られた場合は、重金属中毒症が疑われるため、X線検査を行います。金属片が確認されれば確定診断されます。金属片が見つからなければ、その他の原因を疑いますが、血中亜鉛濃度の測定により高値が検出されれば亜鉛中毒症と診断しますが、小型の鳥では検査が困難となります。
併発症状としてそ嚢の発赤、腫脹といった炎症反応が見られた場合はそ嚢炎を疑い、そ嚢検査によってその原因を特定しますが、熱いお茶を飲んだり、幼鳥に高温のさし餌をしたことが原因で、熱傷を起こすこともあります。
併発症状として現在または過去に肥満があり、その他にも嘴過長、嘴・爪の出血斑、羽毛形成異常がある場合はX線検査を行い、肝肥大による消化管の圧迫・変位の有無を確認します。また血液検査によって肝疾患の確認も行います。
併発症状として脚の不全または完全麻痺やナックリングが見られた場合は、腎腫大による坐骨神経の圧迫を疑い、X線検査を行います。腎腫大が確認されれば、腎腫瘍を疑います。腎腫瘍による消化管の圧迫・変位、腎機能低下も嘔吐・吐出の原因となります。
併発症状として腹部膨大が見られた場合は、X線検査を行います。腹部膨大の原因には、生殖腺腫瘍、卵巣嚢腫が多く、これらによる消化管の圧迫・変位が嘔吐・吐出の原因となります。生殖腺腫瘍、卵巣嚢腫の診断は、X線造影撮影、超音波検査を行います。
併発症状としてそ嚢内に異物が触知されれば、これが嘔吐・吐出の原因と考えられます。

一般検査で異常を欠く場合の鑑別診断(セカンドステップ)

一般検査(身体検査、そ嚢液検査、糞便検査)で特記すべき異常を欠く場合は、少数回の嘔吐・吐出であれば、一時的な寒冷や換羽による体力の低下などが考えられますが、複数回嘔吐・吐出を繰り返すようであれば、次の検査ステップに進みます。
X線検査により消化管の膨大とガス貯留が認められた場合は、排便が正常に行われていない可能性があるため、造影撮影にて通過の確認を行い、胃内異物や物理的閉塞、イレウス(腸閉塞)の診断を行います。
X線検査により腺胃または筋胃の片方または両方に拡張が見られた場合は、セキセイインコでは胃腫瘍の疑いがあり、オカメインコ、ヨウム、コンゴウインコなどでは腺胃拡張症の疑いがあります。
X線検査により筋胃内に多量のグリットが停留している場合は、グリット・インパクションを疑います。
血液検査により肝酵素、総コレステロール、アンモニア、総胆汁酸の上昇が見られれば、肝疾患による嘔吐・吐出と診断します。
血液検査により尿酸値の上昇、リン値の上昇、カルシウム値の上昇または低下、ALPの上昇(腎性二次性副甲状腺機能亢進症による)が見られれば、腎疾患による嘔吐・吐出と診断します。

嘔吐・吐出がみられる病気

胃の病気

メガバクテリア症(マクロラブダス症)
原因 原因菌:マクロラブダス・オルニトガスター(Macrorhabdus ornithogaster


メガバクテリア(マクロラブダス)は、グラム陽性の大型桿菌状微生物であり、酵母の一種で、アナモルフ(無性型)の子嚢菌類に新しい属として提案されています。鳥の胃の中に住む酵母であることから、AGY(Avian Gastric Yeast)とも呼ばれています。感染部位は胃であり、特に中間帯周囲に感染し、重度の胃炎や胃拡張を起こ します。
メガバクテリアは、いくつかの形態があります。壁の厚いタイプ(赤矢印)と壁が薄いタイプ(青矢印)があります。

伝播  伝播は水平感染であり、一般的には親鳥が雛鳥に給餌する際に吐き戻した食物の中のメガバクテリアを摂取することによって感染 します。その他では、同居している感染鳥の糞便中に排泄されたメガバクテリアを経口摂取することによって感染します。
発生  20年以上前よりセキセイインコに広く蔓延しており、特に幼鳥の被害が大きい です。感染する鳥種は多く、コザクラインコ、ボタンインコ、オカメインコ、ブンチョウ、キンカチョウ、カナリヤ、ニワトリ、 ダチョウなどに見られます。
症状  症状は、嘔吐・吐出のほか、全粒便 (穀粒がすり潰されていない状態)、軟便や下痢、血便などがみられます。食欲が低下し、餌は殻を剥くだけで、飲み込まないこ ともあります。
診断  顕微鏡による糞便検査にて、メガバクテリアの検出を行 います。糞便への排泄量と症状の強さには、必ずしも比例関係があるわけでは ありません。またメガバクテリアは胃粘膜内に侵入するため、排泄量が少なくても、必ず対処しなければなりません。
治療  メガバクテリアの治療には抗真菌剤が有効です。補助的に粘膜抵抗強化剤(胃薬)、胃腸機能調整剤(吐き気止め)、抗生物質なども併用します。
予後  発見が早ければ治ることが多いですが、発見が遅れ、胃の障害が大きいと メガバクテリアが糞便中から消失しても症状が治らない事もあ ります。中には慢性胃炎から胃腫瘍に発展したと考えられる症例も多く見つかっています。
糞便中にメガバクテリアが消失しても、胃粘膜内に侵入して残っていることも多いため、長期間の投与が必要です。

 

カンジダ症
原因 原因菌:Candida albicans、Candida sp.
カンジダは鳥の消化管の常在菌です。通常は少数のため問題とならなりませんが、ビタミンA欠乏などによる免疫力の低下、抗生物質による菌交代症によって増殖すると病原性を発揮 します。通常問題となるのはCandida albicansがほとんどです。そ嚢または胃に感染すると症状が発現します。
多くの場合が、熱湯を使用して作った挿し餌を長期間与えられていることが原因となります。
発生 挿し餌中の若鳥、特にオカメインコ、セキセイインコ、ブンチョウにみられます。
症状  糞便中にカンジダがみられても、そ嚢または胃の粘膜に感染していなければ無症状です。しかし粘膜に感染し炎症が起こると嘔吐・吐出のほか、軟便や下痢、血便などがみられます。
診断 そ嚢 液検査、糞便検査にてカンジダの酵母または仮性菌糸を検出します。
  
治療  カンジダの治療には抗真菌剤を使用します。補助的に粘膜抵抗強化剤(胃薬)、胃腸機能調整剤(吐き気止め)、抗生物質なども併用します。

 

胃腫瘍
原因  今のところ不明ですが、過去メガバクテリアに感染し、治療歴のあるセキセイインコに多いことから、メガバクテリアによる慢性炎症が疑われます。またストレスやビタミンA欠乏症も発症の要因となっている可能性があります。
発生  主にセキセイインコによくみられます。
症状  ほとんどの症例で嘔吐・吐出がみられますが、中には吐き気もでない例もあります。腫瘍といっても多くの場合、粘膜に潰瘍病変(図参照)を作るのみで腫瘤が出きることは少ないです。潰瘍病変からは出血することが多く、その場合黒色便(血便)がみられます。また筋胃の機能を失うと、餌をすり潰すことができなくなり、糞便中に穀粒がでてきます。胃の通過が悪くなると、胃液がそ嚢内に逆流し、ドロドロの液体を吐出するようになり、口から泡を吹いたり、頭部がベタベタになったりします。

診断  そ嚢液検査、糞便検査にて病原体が検出されないことが多い。レントゲン検査にて腺胃または筋胃が拡張していることが多い。生前診断は不可能であり、症状と検査結果から本症を疑います。

治療  腫瘍の根本治療は不可能であり、疑われた場合は対症療法を行います。
使用される薬剤は、胃粘膜保護剤、吐き気止め、止血剤、抗生物質、抗真菌剤、鎮痛剤などです。
吐き気がひどく、食欲がない場合には入院治療が必要となります。

 

PDD(腺胃拡張症)
原因  PDD(Proventricular Dilatation Disease)は、 鳥ボルナウイルスによって引き起こされる感染症です。腺胃の神経節炎による麻痺により腺胃平滑筋の弛緩が起こり、腺胃が拡張する病気です。
発生  多くの インコ・オウム類にみつかっていますが、ヨウム、バタンオウム、コンゴウインコ類、オカメインコなどに時折発生がみられます。
症状  PDDは末期まで症状を出さないことが多く、嘔吐・吐出がみられた時にはかなり腺胃が拡張していることが多いです。腺胃が拡張する原因が消化管の神経麻痺であるため、通過障害も多くみられ、糞便量が減少します。この他にも脚の麻痺や痙攣、毛引き症がみられることもあります。
診断  レントゲン検査にて腺胃が拡張しているのを確認します。また血液検査にてCPKの上昇がみられるのも特徴的です。


PDDの診断は、今までは組織内の神経節炎の確認によって行われていました。病変はそ嚢にもでるため、海外では麻酔下にてそ嚢のバイオプシ ー(一部切り取る)を行い、病理検査を行っていました。しかし近年、PDDがボルナウイルスであることが判明したことから、PCR(遺伝子検査)で診断できるようになりました。検体は糞便が推奨されます。感染すれば必ず糞便中にウイルスが排泄されるわけではないため、結果が陰性であった場合は複数回検査を行わなければ診断できないこともあります。

治療  PDDの根本治療は不可能であり、疑われた場合は対症療法を行います。
使用される薬剤は、神経節炎を抑えるために非ステロイド系抗炎症役を用います。その他に対症療法として胃粘膜保護剤、消化器機能調整剤、抗生物質、抗真菌剤なども用いられます。
食事は食べるようであれば、PDD用処方食を用います。

 

クリプトスポリジウム症
原因  寄生虫の一種で、原虫に分類されるクリプトスポリジムが胃に感染することによって起こります。
発生  コザクラインコ、特に5歳以上になってから発症することが多いです。
症状  発症する前は無症状ですが、発症すると慢性頑固な吐き気、嘔吐がみられます。吐き気、嘔吐は、朝にみられることが多く、粘稠性の高いネバネバした液を吐き出します。食欲は低下し、徐々に衰弱していきます。
吐物を誤嚥することにより、肺炎を起こすことがあります。
診断  糞便のショ糖浮遊法検査により、クリプトスポリジウム のオーシストを検出します。

レントゲン検査では、中間帯(腺胃と筋胃の間)の拡張がみられることが多いです。
治療  人を含め多くの動物に感染するクリプトスポリジウムがみつかっていますが、未だ駆虫薬は開発されていません。人では、効く可能性がある薬剤として、ニタゾキサニドとパロモマイシンが使用されますが、コザクラインコの治療にもこれらを用います。しかし投薬により、完全に駆虫することはできず、投薬中は糞便への排泄の減少がみられますが、投与を中止すると、また排泄量が増えてきます。
よって胃腸薬や吐き気止め、抗生物質、抗真菌剤など対症的な薬剤を使い、胃炎吐き気をコントロールします。
予後  発症すると完治することはないので、徐々に衰弱します。

 

異物
原因  石や装飾品、ボタン、針金、ゴム、糸などの異物を誤飲 することがあります。
発生  200g以上の大型オウム目鳥、ニワトリ、ウズラで発生が多い。
症状  異物が胃腸内に停滞することによって、嘔吐 や吐き気がみられます。胃腸の不完全閉塞や完全閉塞を起こすこともあります。
診断  レントゲン検査にて胃腸内の異物を確認しますが、石や金属を含むものまたは大型の異物以外は写ってきません。
治療  鳥は哺乳類と異なり筋胃内に硬いものを停留させるため、1日経てば便に出るということはありません。毒性の無い小型の異物であれば経過観察 によって自然排泄を待つ場合もありますが、閉塞を起こしている場合には、腺胃切開術または腸管切開術によって異物 を摘出します。

 

グリットインパクション
原因  グリットの過食 が原因で起こります。グリットとは砂のことで、多くの鳥類は、2つ目の胃である砂肝(筋胃)にグリットを停留させています。餌を丸呑みしている鳥たちは、このグリットと一緒に筋肉でできた胃で餌をすり潰しているのです。飼い鳥の餌の中でグリットになり得るものには、ボレー粉、塩土、カットルボーンの硬い部分、焼き砂、ペレットに含まれる炭酸カルシウムの粒などがあります。
発生  コザクラインコ、ボタンインコ、オカメインコに多くみられます。
症状  嘔吐、吐き気 がみられ、通過障害がみられることもあります。
診断  レントゲン検査にて筋胃 内のグリットの充満を確認します。

筋胃内にグリットが充満したオカメインコ

治療  グリットの給餌 を中止します。一度なった鳥は、またなる可能性が高いため、グリットは与えないようします。推奨される鉱物資料は、カットルボーンの柔らかい部分です。
使用される薬剤は、胃粘膜保護剤、消化器機能調整剤などです。

そ嚢の病気

トリコモナス症
原因 原因寄生虫:Trichomonas gallinae、Trichomonas sp.


トリコモナスは、原虫に分類される寄生虫です。鳥のそ嚢に感染し、そ嚢炎を起こします。
トリコモナスには、弱毒株と強毒株があり、弱毒株では無症状で経過することもあり生ます。強毒株に感染した幼鳥は、重篤な症状に発展します。

発生  ブンチョウの幼鳥に頻発します。その他オカメインコの幼鳥、ジャンボセキセイインコに時折みられます。寄生虫の発生には地域差があります。
症状  吐出、吐き気 がみられ、食欲が低下します。
口内炎、食道炎、そ嚢炎を起こし、口腔内に粘液の分泌がみられます。粘膜の壊死により、潰瘍病変や膿の形成がみられます。
診断  そ嚢液 検査にてトリコモナス・トロフォゾイトを検出します。
治療  治療には、抗トリコモナス剤を用います。炎症が重篤な場合には、抗生物質、抗真菌剤、止血剤なども併用します。
食欲が廃絶した幼鳥では、入院治療が必要となります。

 

細菌感染
原因  いわゆる”そ嚢炎”といわれているもの。
グラム陰性桿菌、グラム陽性球菌などのそ嚢内感染が原因です。
発生  トリコモナス症やカンジダ症に伴って細菌感染を起こすことはありますが、細菌単独でそ嚢炎を起すことは少ないです。
症状  粘稠性が高い悪臭のする液体の吐出、頭部の汚染 。
診断  そ嚢液のグラム染色にて、グラム陰性桿菌またはグラム陽性球菌の増殖と共に、炎症性細胞、出血を伴 います。触診にて、そ嚢粘膜の発赤、腫脹がみられます。
治療  細菌培養、感受性検査に基づく、抗生物質の投与 。

 

熱傷
原因  飼い主が誤って高温のさし餌を給餌したり、鳥が誤ってお湯を飲んでしまうことによってそ嚢に熱傷を起こします。
症状  口腔内から食道、そ嚢にかけて粘膜の発赤、腫脹がみられます。食欲は極端に低下し、そ嚢内の食帯を起こします。熱傷がひどい場合には、そ嚢が一部 または広範囲に壊死し、穿孔する場合もあります。
診断  高温のものを口にしていないかを聴取し、口腔内から食道、そ嚢にかけて触診し、診断します。
治療  使用される薬剤は、抗生物質、消炎剤、止血剤などを用います。
そ嚢が穿孔した場合には、手術にて壊死部を切除し、縫合します。

 

そ嚢内異物
原因  衣服や絨毯、ケージカバーなどの繊維 や羽毛を長期間かけて少量ずつ摂取することによって、そ嚢内で絡み合い、フェルト状になって停留します。

セキセイインコのそ嚢内から摘出された異物

発生  セキセイインコ、オカメインコに多くみられます。フィンチ類での発生は確認していません。
症状  そ嚢内の塊が大きくなると、慢性的な吐き気がみられるようになります。
診断  そ嚢の触診とレントゲン検査 にて行います。
治療  そ嚢切開術により、異物を摘出します。
そ嚢切開術についてはコチラ

 

そ嚢結石
原因  そ嚢内に結石が形成される病気です。結石の多くは尿酸結石です。結石ができる原因は、分かっていませんが、食糞癖により尿酸を慢性的に摂取することが原因となっている可能性があります。

セキセイインコのそ嚢から摘出された結石

発生  セキセイインコに多くみられます。フィンチ類での発生は確認していません。
症状  そ嚢内で結石大きくなると、慢性的な吐き気がみられるようになります。
診断  そ嚢の触診とレントゲン検査 にて行います。
治療  そ嚢切開術により、結石を摘出します。

消化管の圧迫、変位

肝肥大
原因  肝肥大によって胃が背尾側への変位し、これにより吐き気が生じます。
肝肥大は、脂肪肝症候群、鳥クラミジア症、心疾患による肝うっ血などによって起こります。
症状  嘔吐/吐出/吐き気
診断  レントゲン検査 にて肝臓の肥大を確認します。
治療  脂肪肝症候群、鳥クラミジア症、心疾患参照

 

生殖器腫瘍、嚢腫
原因  精巣腫瘍または卵巣腫瘍、卵管腫瘍、卵巣嚢腫による胃の腹側への変位 や消化管の圧迫により吐き気が生じます。
症状  腹部膨大がみられます。
嘔吐/吐出/吐き気
診断  レントゲン検査にて胃の腹側への変位や消化管の圧迫 を確認します。消化管の位置がはっきりしない場合には、消化管造影撮影を行います。
超音波検査にて体腔内の腫瘤や嚢胞の確認を行います。
治療  摘出が可能なものに対しては、手術を行います。
嚢胞内に貯留液があり、手術が不可能である場合には、貯留液を注射器で抜く場合もあります。

甲状腺肥大

甲状腺腫
原因 甲状腺肥大により下部食道が圧迫され、通過障害 が起こることによって吐き気がでます。
甲状腺腫参照

肝疾患

肝疾患
脂肪肝症候群 参照

腎疾患

腎疾患
多飲・多尿 参照

中毒症

重金属中毒症
原因 鉛、亜鉛などの重金属類を誤って摂取することによって起こります。

釣りの重り、カーテンの重り(バランサー)、絵の具のチューブ、アンティーク調の金具
亜鉛 古い亜鉛メッキケージ、亜鉛メッキの鈴やチェーン
スズ ハンダ
成分不明 五徳の耐熱塗料
発生  インコ類、特にオカメインコに多く みられます。セキセイインコ、ラブバード等にも比較的多く発生します。
症状  突然の元気食欲低下と嘔吐、濃緑色便(ビリジアン色)が特徴です。
他にも痙攣や過敏症などの神経症状、趾の麻痺(ナックリング )、多尿による脱水症状、消化管うっ滞などもよくみられます。
血液中では、溶血(赤血球が壊れる)が起こり、貧血を起こします。腎不全と重度の溶血により血尿が出ることもあります。
診断  レントゲン検査にて 消化管内の金属片を検出します。


重金属中毒症が疑いがあるが、レントゲン検査で金属片が検出されない場合には、血中鉛濃度の測定を行う場合もあります。

治療  補液療法による脱水の改善を早急に行う必要があります。
中毒に対しては、解毒剤の投与を行います。鳥類は哺乳類と異なり、硬い物は筋胃に停留するため、金属片は1日で排泄されることはありません。解毒剤は、金属片が完全に排泄されるまで投与します。
中毒によって起こる症状に対しては、消化器機能改善剤、肝庇護剤、尿酸排泄促進剤など投与による対症療法を行います。
予後  中毒症状が早期に治まれば、予後は比較的よいですが、消化管 うっ滞、血尿、腎不全、痙攣がひどくなると助からないこともあります。

 

その他の毒物摂取
原因  お部屋の中には、中毒を起こす可能性があるものがたくさんあります。
観葉植物、化学肥料、殺虫剤、塩、古い油などを摂取すると中毒を起こすことがあります。
症状  嘔吐/吐出/吐き気
診断  目撃情報や普段の生活習慣から推察します。
治療  補液 療法、肝庇護剤による対症療法を行います。

生理的な吐出

インコ・オウム類雄の発情吐出
原因  インコ・オウム類雄の求愛行動です。
時折雌鳥にもみられることがあります。
病的な吐き気との違いは、撒き散らさず、何か対象に向かって吐き付けます。

 

インコ・オウム類雌の育雛期
原因  育雛期、つまりに 雛を育てているつもりになってしまっている時に吐出します。
病的な吐き気との違いは、撒き散らさず、何か対象に向かって吐き付けます。

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