腹部膨大②(症状)

腹部膨大② 腹部膨大がみられる病気

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腹部膨大① 鑑別診断

腹部膨大とは、平坦な腹部が体腔内の腫瘤や脂肪、貯留液などによって全体的に膨大または一部膨隆する状態を言います。鳥の非発情期の腹部はかなり狭く、腹側面のほとんどは胸骨で覆われています。また哺乳類とは異なり気嚢が存在するため、体腔内の容積が増えても初期は気嚢が圧迫を受けるだけで、腹部膨大の徴候がみられることは少ないです。よって臨床徴候として膨大がみられた時には、進行した状態であることを理解しておかなければなりません・・・

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生殖器疾患

腹壁ヘルニア

腹壁ヘルニア

 腹壁ヘルニアとは、腹筋が断裂または筋肉結合が弛緩してヘルニア輪を形成し、皮下へ臓器が脱出した状態です。ヘルニア嚢は、犬猫においては多くの場合、腹膜にて形成されますが、飼い鳥では肝後中隔によって形成されます。腸管および卵管は、腸管腹膜腔に収められているため、ヘルニア形成時には、断裂した腹筋から肝後中隔によって形成されたヘルニア嚢に包まれた状態で皮下に腸管や卵管が脱出しています。

腹壁ヘルニア

 腹壁ヘルニアの発生部位は、大きく分けて2ヶ所であり、腹部正中部(臍部)または体側部(鼠径部)です。腹部正中に発生した場合、多くの例で腹筋が横断裂様に弛緩しヘルニア輪が形成されています。体側部に発生した場合、多くは恥骨のやや頭側よりで、哺乳類で言えば鼠径部の位置です。また腹壁ではないですが、排泄孔の尾側にもヘルニアが形成されることがあります。

原 因  慢性発情や慢性産卵が原因です。光周期の延長、相手の存在、巣や巣材の存在、温暖な環境などが発情刺激となります。 (発情に関してはコチラを参照)持続発情は、エストロジェン過剰症を引き起こし、繰り返し腹壁の弛緩、伸展が起こり、組織やその結合が脆弱となると考えられています。持続的な卵管の発達と産卵時の腹圧は、脆弱となった腹壁をさらに弛緩、伸展させヘルニアを引き起こすと考えられています。しかし一度も産卵したことのない個体や腹圧が高くないと思われる個体においても発生がみられることから、明確な発生機序はまだわかっていません。
発 生  発生のほとんどはセキセイインコの雌にみられますが、オカメインコ、ラブバード、ブンチョウにもみられます。発生にはエストロジェン過剰症が強く関与していると考えられており、罹患鳥には持続発情、慢性産卵が高率にみられます。
症 状

 重度の卵黄性腹膜炎や嵌頓ヘルニアを起こしていない限り、通常食欲元気に問題はありません。
 腹部は膨隆し、通常皮膚がキサントーマ化しています。 キサントーマとは、皮膚にコレステロールが沈着し、炎症を起こした状態です。皮膚は黄色くなり、肥厚します。

卵黄性腹膜炎

 卵管疾患等によりヘルニア内容の増加があっても体腔外へ脱出しているため、呼吸器の圧迫は少なく、腹部膨大が重度であっても呼吸困難を呈すことは少ないです。
 ヘルニア内に総排泄腔が入り込むと排便困難となり、多量の糞便が貯留することがあります。
 腹壁ヘルニアとなっていても卵管が正常な場合は、産卵することも多いです。しかし卵管がヘルニア内に入り込んでいることから、卵停滞や難産となることもあります。
 腹部膨大が進行し、立った状態でも止まり木や床に腹部が当たるようになると擦過傷が形成されます。また腹部の違和感や擦過傷部を気にすることによって自咬したり、足で蹴ったりし、皮膚から出血することもあり、最悪の例では腹部が破れ、ヘルニア内容(腸管や卵管)が脱出することもあります。

診 断

 他の腹部膨大疾患との鑑別や併発疾患を診断するためには、レントゲン検査が有用です。レントゲン検査では、単純撮影および消化管造影撮影を行います。

消化管造影撮影

腹壁ヘルニアの単純撮影での特徴は、ラテラル像にて腹壁の陰影が確認でき皮下へ臓器が脱出していることです。ヘルニアではなく腹部が膨大している場合には、腹壁は膨隆と共に進展し、臓器は皮下へ脱出していません。VD像では、臓器が皮下へ脱出しているため呼吸器への圧迫が少ないか全くなく、気嚢スペースが確保されています。ヘルニアではない腹部膨大の場合には、呼吸器への圧迫大きく、気嚢スペースは確保されず、砂時計型陰影も消失しています。

腹壁ヘルニアの消化管造影撮影

 腹壁ヘルニアの消化管造影撮影での特徴は、ラテラル像にて多くの場合、腸管がヘルニア嚢内へ脱出しているのが確認できます。またヘルニア輪の位置も確認することができます。VD像では、卵管が発達または疾患の場合、卵管は左側にあるため腸管は右側へ変位しています。

治 療 治療には、外科的な整復が必要になります。外科治療の詳細はコチラ

▲外科治療の詳細は外部サイトリンクになります。(旧ホームページ)▲

卵塞症

卵塞症
 卵塞症とは、いわゆる”卵詰まり”のことです。卵塞症には、卵が正常な卵管通過時間を過ぎて停滞している卵停滞と卵管口が広がらないために産卵に至らない難産があります。
原 因  卵塞が起こる原因には、寒冷や環境の変化などの様々なストレス、カルシウム給与不足または過産卵による低カルシウム血症および卵殻形成不全、ホルモン異常による産道弛緩不全、卵管口閉塞、骨格異常、腹壁ヘルニア、高齢など様々な原因があります。
発 生  飼い鳥のほとんどの種に起こり得ます。産卵は排卵後24時間以内に行われるのが正常ですが、多くの飼い主はそのうち生まれるものと考えていることが多いため、来院が遅れることが多いです。
症 状

 腹部膨大もほとんど目立たず、元気食欲もあり、すぐに症状を示さない場合もありますが、ほとんどの症例で元気食欲の減退、膨羽、腹部の軽度の膨満、排便障害、糞便への血液の付着などがみられます。

膨羽、腹部の軽度の膨満

また低カルシウム血症が併発している場合には、沈鬱、振戦、歩行異常、時に虚脱などがみられます。

診 断

 卵の存在の確認は、多くの場合触診によって可能です。しかしそれが卵塞症なのか、また卵の位置がどこかは、実際に圧迫してみないと分からないことが多いです。

、レントゲン検査

よって診断は詳しい問診および触診、レントゲン検査、治療を兼ねた圧迫をして総合的に判断します。

治 療

 卵塞症の治療法の一つに、卵圧迫排出処置があります。これは鳥を保定し、指で卵を押して強制的に塞卵を排出させる方法です。

卵圧迫排出処置

難産の場合、卵は子宮部から膣部にあるため、この処置法は非常に有用です。しかし卵停滞の場合は、圧迫により排出できるのは、卵が卵殻腺から膣部にある場合だけであるため、腹部に圧迫をかける場合には、卵が確実にこの位置にあるかどうかを慎重に評価しなければなりません。病院では下記の点に注して処置を行います。

  評価 注意点
卵塞の期間 腹部に卵を触ったとしても、すぐに卵塞症であるかどうかの判断は困難です。 卵が形成されていても、すぐに圧迫してはいけません。鳥の状態が悪くなければ、1日様子を観察して、産卵を待つこともあります。
発情の程度 今現在の発情の程度を行動や腹部の触診から評価します。 発情行動が顕著でなく、腹部弛緩も軽度であった場合、卵塞している期間が長い可能性があり、産卵経路が容易に弛緩しないことがあります。
卵殻形成の有無 腹部から塞卵を触診し、硬度の確認を行います。弾力性がある場合には、卵殻の形成がされていません。 卵殻の形成がない場合は、粘膜に張り付きやすく、移動し難いです。破裂させるとすぐに形状を失い、排出処置が困難となります。
塞卵の位置 卵管は左側にあるため、子宮部に卵がある場合には、腹側のわずかに左側に触ることができます。 卵が頭背側にある場合や右側に位置している場合には、子宮部内に無い可能性があ ります。子宮部にない場合、圧迫排出はできません。
塞卵の数 腹部が大きく膨隆するほど塞卵が腹側に寄っている場合は、2個以上の卵が停滞している可能性がある ります。
既に破裂した卵も入っていることがあるため、圧迫前にレントゲン検査にて確認を行います。
塞卵は1個とは限らないので、1個排出した後も腹部を触診し、さらに塞卵がないかを常に確認する必要があ ります。
卵は卵殻が形成されていないと写らないため、 レントゲン検査だけでなく、超音波検査をすることもあります。
圧迫時の総排泄腔の変化 腹部から卵を圧迫した際、卵が卵殻腺から膣部にある場合、総排泄腔の反転と共に卵が卵管口に向かって移動して きますが、卵が卵管口に向かわない場合は、子宮部から膣部以外に位置している可能性があります。 圧迫により卵が卵管口に向かわない場合は、卵管上部あるいは卵管外にある可能性があり、圧迫排出は困難です。この場合は、開腹による卵の摘出を行 います。
膣部および卵管口弛緩の有無 産卵には膣部および卵管口の弛緩が必要ですが、圧迫時にこれらが弛緩するかどうかをよく観察する必要があ ります。弛緩がみられないようであれば、圧迫のみでの排出は困難です。 膣部および卵管口の弛緩が起こらない状態で卵の圧迫を続けた場合、総排泄腔破裂や卵管口裂傷を起こす可能性があ ります。
この場合は、卵管口から卵が少し確認できた時点で、穴を開けて内部を吸引し、殻を割って小さくして排出します。


飼い主が安易に圧迫するのは非常に危険です!
必ず病院で処置を受けて下さい。

 卵が圧迫で 排出できない場合は、開腹手術によって卵を摘出します。この場合、2度と卵塞症を起こさないよう卵管を摘出してしまうのが一般的です。

卵材蓄卵材症

卵材蓄卵材症

 卵管蓄卵材症とは、卵管内に卵材が蓄積し、卵管が膨大した状態です。卵材の状態や量は様々で、比較的卵白・卵黄に近い状態のものから、ペースト状のもの、卵殻膜が何重にも形成され塊になったもの (図参照)、卵殻腺内で結石状になったものなどがあります。

卵管蓄卵材症

英名は、Oviduct Impactionであり、直訳すると卵管充満となり、病名としては分かりにくいため、状態が子宮蓄膿症に類似していることから、卵管蓄卵材症と便宜的に呼んでいます。卵塞症との違いは、卵管内の卵材は、正常な大きさの卵にはなっておらず、様々な形状の卵材が蓄積していることです。

原 因  雌性生殖器疾患であるため、発情が関係していることが考えられますが、実際の発症機序は解明されていません。卵にならなかった卵材が徐々に蓄積して、このような状態になると考えられるが、定かではありません。
発 生  セキセイインコに最も多くみられます。オカメインコ、ラブバードにも時折みられます。
症 状  腹部膨大がみられ、腹壁はキサントーマ化していることもあります。腹壁ヘルニアと併発していることも多いです。通常卵巣は正常であるため、発情していることが多いです。卵材が体腔内に大量に漏れない限り元気ですが、呼吸器の圧迫があるため、呼吸促迫になっている例もあります。卵材が体腔内に大量に漏れた場合、卵黄性腹膜炎を起こすため、急性に状態が悪化することがあります。
診 断

 診断には、レントゲン検査、超音波検査が有用です。レントゲン検査は、単純撮影および造影撮影を行います。単純撮影では、卵管内に卵殻成分があれば卵材の蓄積が確認できますが (図参照)

卵材の蓄積が確認できます

ない場合には体腔内のコントラストが低いため卵材をはっきりと確認できないことが多いです。消化管造影撮影では、膨大した卵管により腸管が右体側へ変位していることが特徴です。

治 療  根本的な治療は、卵管摘出術です。一度蓄積した卵材は、発情の停止と共に体積が減少することはありますが、再び卵管から吸収されることは無いため、内服での治療は効をなしません。

卵黄性腹膜炎

卵黄性腹膜炎
 卵黄性腹膜炎は卵材性体腔炎とも呼ばれ、卵材が体腔内へ漏出することによって起こる腹膜炎(体腔炎)です。無菌的な場合と感染性の場合があり、感染性の場合は、卵管炎からの波及であり、急性に敗血症を引き起こし、状態が悪化します。
原 因  多くが卵管蓄卵材症または卵墜症の続発症として発症します。卵管内に蓄積した卵材が体腔内に多量に漏れた際に発症することが多いです。また感染性の腹膜炎は卵管炎からの続発症として起こることが多く、細菌は卵管口から上行性に感染すると考えられています。
発 生  セキセイインコに最も多くみられ、オカメインコ、ラブバードにも時折みられます。
症 状

 腹部膨大し、腹壁は腫脹し、発赤がみられる場合もあります。症状は突発的にみられることが多く、急性に脱水症状がみられ、食欲元気が低下します。腹痛により腹部を蹴る様子がみられることもあります。

緑色尿酸

消化器機能が低下するため、機能的イレウスや嘔吐がみられることもあります。敗血症による溶血から、緑色尿酸も高率にみられます。

診 断  発情徴候の有無や産歴、特徴的な症候から本症を予測するのは容易です。レントゲン検査および超音波検査により体腔内の状態を把握することによっても診断につなげることができます。オカメインコ、ラブバードでは腹水が貯留することが多いですが、セキセイインコでは、少量みられるか、またはみられないことが多いです。
治 療  本症が診断されたならば、早急な開腹手術が必要です。まず卵管を摘出し、後に抗生物質を添加した生理食塩水で体腔内を洗浄し、取り切れる分の卵材を除去します。卵材は、体腔内壁および臓器にこびりついてしまうことも多く、出血が多くならない程度にできるだけ剥がして除去します。
 体腔内の腹水の培養検査および感受性試験を行い、適切な抗生物質の投与を行います。

巣・卵管腫瘍

卵巣・卵管腫瘍
原 因  持続的な発情が発生率を上げていると考えられますが、正確な原因は不明です。卵巣腫瘍には、卵巣癌、顆粒膜細胞腫、腺腫、肉腫などがみられます。卵管腫瘍には、卵管癌、腺腫、肉腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫などがみられます。
発 生  セキセイインコに最も多くみられ、オカメインコ、ラブバードにも時折みられます。
症 状

 腹部膨大が特徴的です。腹壁は、正常卵巣が残っている場合やエストロジェン分泌性の機能性腫瘍では、キサントーマ化がみられることが多いですが、多くの卵巣腫瘍ではエストロジェン分泌が低下し、腹壁のキサントーマ化がみられません。セキセイインコの場合、エストロジェン分泌の有無は、ロウ膜の色でも推測することができます。エストロジェン分泌が低下または停止した雌鳥は、ロウ膜の色が雄の色に近い青い色に変化してくることが多いです。

しかしロウ膜の角質が剥がれなければ、いつまでもこげ茶色のこともあるため、レントゲン検査での骨髄骨の有無も合わせて評価する必要があります。

 現れる症状は、腫瘤や嚢胞による諸臓器の圧迫が原因です。呼吸器圧迫による呼吸促迫、消化管圧迫による嘔吐および通過遅延、腎機能および肝機能障害、循環器不全などさまざまな弊害がでます。

診 断  診断は、レントゲン検査および超音波検査を行い、腫瘤の位置および形状、嚢胞水および腹水の有無を確認します。腫瘤の位置が分かりにくい場合には、消化管造影撮影を行います。腫瘤が卵巣位置にあるか否かで卵巣腫瘍か卵管腫瘍かの推測はできますが、確実には試験開腹を行い、腫瘤の病理組織検査を行わない限り鑑別は困難です。
治 療  完治させるには、摘出術を行います。しかし腫瘤が体腔や腸に癒着している場合には、取りきれないこともあります。
 外科的摘出が困難、または希望しない場合には、エストロジェン分泌がみられる場合に限り、ホルモン療法を行います。

精巣腫瘍

精巣腫瘍
 鳥類にみられる精巣腫瘍には、セルトリ細胞腫、間細胞腫、精上皮腫、リンパ肉腫、奇形腫があります。セキセイインコに発生が多い腫瘍は、セルトリ細胞腫、間細胞腫、精上皮腫であり、リンパ肉腫、奇形腫はまれです。セキセイインコに発生する精巣腫瘍の多くは、エストロジェン分泌性であり、多骨性過骨症およびロウ膜の雌色化がみられることが多いです。多くの場合、腫瘍は片側性ですが、両側性のこともあります。
原 因  発症の原因は不明です。
発 生  飼い鳥では、セキセイインコに最も多くみられ、高齢のオカメインコやラブバードに時折みられるます。
症 状

 外貌は腹部膨大のほか、エストロジェン分泌性である場合、ロウ膜の茶色化、雌の交尾受容姿勢、頭部の発情臭、恥骨間の拡張など、雌の発情期にみられる所見がみられます。

頭部の発情臭

 腫瘍による臓器の圧迫により、様々な症状が引き起こされます。呼吸器圧迫により、呼吸促迫、運動不耐性がみられます。また消化管圧迫による嘔吐や血便がみられることもあります。腎臓の圧迫による腎不全、さらに腎臓背側の坐骨神経まで圧迫を受けた場合には、歩行異常がみられます。

 腹水を伴うこともあり、この場合腹部膨大が悪化します。また腫瘍からの突発的な出血を起こすことで急死することもあります。

診 断

 診断には、レントゲン検査、超音波検査が有用です。多くの場合、単純撮影のみで腫瘍が確認できますが、コントラストが付かず腫瘤が確認できない時は、造影撮影を行います。

単純撮影のみで腫瘍が確認できます

エストロジェン分泌性である場合は、多骨性過骨症がみられます。

 超音波検査では、腫瘤の状態を確認しますが、実質性であることが多いですが、嚢胞性の場合や、腫瘤周囲に嚢胞が形成されている場合もあります。

治 療  根本的な治療は、精巣腫瘍摘出ですが、非常にリスクの高い手術となります。多骨性過骨症がみられる場合は、エストロジェン分泌性であるため、ホルモン療法を行うこともありますが、著効を示すことは少ないです。 精巣腫瘍の手術に関してはコチラ

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生殖器疾患以外の病気

肝肥大

肝肥大
原 因  肝肥大の原因には、細菌、クラミジアおよびウイルスによる肝炎、活動性肝炎、脂肪肝症候群、肝腫瘍などがあります。
発 生  細菌、クラミジアおよびウイルスによる肝炎、活動性肝炎、脂肪肝症候群は、セキセイインコ、オカメインコ、ラブバードに多くみられます。肝腫瘍は、ブンチョウ、ジュウシマツで多くみられます。
症 状  肝肥大による腹部膨大は、顕著な膨大ではなく、触診にて分かる程度であることが多いです。皮下脂肪が少ない場合には、触診時に腹壁を通して肝肥大が確認できることもあります。
 特異的症状は、その病気により変わりますが、肝疾患に共通して出現することが多い症状には、尿酸の黄色または緑色化、嘴の過長、脆弱化および出血斑、羽毛異常があります。
診 断  診断には、レントゲン検査、超音波検査、血液生化学検査が有用です。感染の鑑別には、遺伝子検査を用います。
治 療  診断に従って、治療を行います。肝機能障害の治療には、肝庇護剤を用います。

 

胆嚢嚢腫

胆嚢嚢腫
原 因  胆嚢嚢腫は、胆汁が腸に排泄されず、胆嚢に貯留した状態です。胆管閉塞によって起こる病気ですが、胆管閉塞の原因はまだ分かっていません。
発 生  主にブンチョウにみられます。インコ・オウム類は胆嚢が無いため、この病気にはなりません。
症 状

 腹部が膨大し、腹壁より拡張した胆嚢を透けて見ることができます。鳥の胆汁は、濃緑色であるため、胆嚢は濃緑色に見えます。

胆嚢は濃緑色に見えます。

 人では、胆汁が排泄されないと黄疸を起こし、皮膚が黄色くなりますが、鳥の皮膚色に変化が出ることはありません。しかし尿が黄色くなることはあります。

 胆汁不足により脂肪消化に影響が出るため、糞便中に未消化脂肪が排泄されます。

診 断  特徴的な外貌とレントゲン検査、超音波検査にて診断を行います。
治 療  胆管閉塞の治療は困難なため、完治させることは困難です。胆汁の十二指腸への排出口をゆるめる作用がある利胆剤を投与しますが、効果がでることは少ないです。

腹水症

腹水症
 鳥類は、哺乳類のように腹腔と胸腔が横隔膜で分かれていません。鳥類の体腔には、肝後中隔という膜があり、心臓と肝臓がある肝臓腹膜腔と腸管と生殖器がある腸管腹膜腔の2つに分かれています。腹水がある場合には、このどちらに貯留しているかを検査する必要があります。
原 因

 肝臓腹膜腔に液体が貯留する原因は、心疾患あるいは肝疾患による門脈圧の上昇です。門脈の血圧が上昇することにより、血管から水分が漏出し、液体が貯留します。

 腸管腹膜腔に液体が貯留する原因には、卵巣・卵管腫瘍、精巣腫瘍などの腸管腹膜腔内の腫瘍からの漏出や血管の圧迫、卵黄性腹膜炎による滲出液などがあります。

症 状  腹水貯留による腹部膨大がみられます。肝臓腹膜腔と腸管腹膜腔の液体の貯留は、外観上は鑑別することはできません。
 呼吸器が圧迫されるため、呼吸促迫や呼吸困難がみられます。
診 断

 レントゲン検査および超音波検査を行い、腹水の貯留部位を鑑別すします。

 レントゲン検査にて、胃の位置が背尾側へ変位している場合には、肝臓腹膜腔に腹水が貯留している可能性が高いです。腸管腹膜腔に腹水が貯留している場合には、腹部全体の液体密度の増高がみられ、背側にマスがない限り、胃は腹側へ変位することが多いです。単純撮影で診断が付かない場合には、消化管造影撮影を行い、腸管の位置で診断することができます。

 超音波検査では、腹部の矢状断面における肝後中隔の位置を確認する。腸管腹膜腔に腹水が貯留している場合には、肝後中隔は確認できず、浮遊する腸管が確認することができます。肝臓腹膜腔に貯留している場合には、腹側に腹水と肥大した肝臓が確認され、肝後中隔が背側へ変位し、そのさらに背側に変位した消化管が確認できます。

治 療

 治療は、原因治療を目的とします。心疾患性の高血圧が原因の場合は、ACE阻害薬などの心臓薬や利尿剤の投与を行います。この時高脂血症がみられることも多く、存在する場合には、高脂血症治療薬の投与を行います。

 腫瘍性疾患の場合は、摘出が可能なものは外科的治療を行います。

 卵黄性腹膜炎の場合は、卵管摘出術および体腔内洗浄を行います。腹水は培養検査および感受性試験を行い抗生物質の投与を行います。

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腎臓腫瘍

腎臓腫瘍
原 因  鳥類の腎臓は複合仙骨内に入り込んでおり、坐骨神経はその直下に位置しています。腎臓の腫瘍化により坐骨神経が圧迫を受け、脚の完全・不完全麻痺が起こります。
発 生  主にセキセイインコにみられますが、まれにラブバードにもみられることがあります。
症 状

 両側または片側性の麻痺性脚弱、ナックリングがみられます。

両側または片側性の麻痺性脚弱、ナックリング

診 断

 レントゲン検査にて、腎腫瘍を確認します。

消化管造影を行う

消化管とのコントラストが付かない場合は、消化管造影を行うと、腎臓の腫大が確認しやすいです。また超音波検査により腎臓の腫大を確認します。

治 療  腎腫瘍は通常両側性に発生するため、摘出は困難です。腎機能の改善、支持療法を治療方針とし、尿酸排泄促進剤の投与を行います。

その他の腸管腹膜腔内腫瘍

その他の腸管腹膜腔内腫瘍

 生殖器系腫瘍や腎臓腫瘍以外にも、腸管腹膜腔内に腫瘍ができることがあります。飼い鳥に求められている腫瘍には、血管腫、血管肉腫、線維腫、線維肉腫、脂肪腫、軟骨肉腫、膵臓腫瘍などがあります。

 これら腫瘍発生時には、腹水が伴うことが多く、生殖器腫瘍と鑑別が困難なこともあります。

 治療には、摘出手術を行いますが、体腔や内臓への癒着が大きいと摘出困難です。

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腹部膨大① 鑑別診断

腹部膨大とは、平坦な腹部が体腔内の腫瘤や脂肪、貯留液などによって全体的に膨大または一部膨隆する状態を言います。鳥の非発情期の腹部はかなり狭く、腹側面のほとんどは胸骨で覆われています。また哺乳類とは異なり気嚢が存在するため、体腔内の容積が増えても初期は気嚢が圧迫を受けるだけで、腹部膨大の徴候がみられることは少ないです。よって臨床徴候として膨大がみられた時には、進行した状態であることを理解しておかなければなりません・・・

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